2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520258
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
北原 久嗣 Keio University, 言語文化研究所, 准教授 (50301495)
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Keywords | 生成文法理論 / ミニマリスト・プログラム / 徹底した派生主義 / 統語システム / 解釈システム / 循環的生成手順 |
Research Abstract |
ミニマリスト・プログラムと呼ばれる生成文法理論の研究は、脳に内在する言語器官を特徴づける最適性とも言うべき性質を明らかにしつつある。ミニマリスト・プログラムが提供する研究上の指針には、(記述的装置のクラスを最小限にするよう求める)「最小設計」指針、および(演算の操作上の複雑性を縮小するよう求める)「単純計算」指針と呼びうるものがあるが、本研究では、「単純計算」指針に幾分焦点をおき、操作上の複雑性の縮小は言語器官の構造を決定する上で最も重要な因子であると想定する。この想定のもと、本研究最終年度となる平成19年度は、これまでの研究成果を踏まえつつ、循環的分析(Chomsky 2000,2001,2005,2006)と派生的分析(Epstein, et. al.1998,Epstein and Seely 2002,2006)を中心に検証し、(統語関係を決定する)統語システムから(音声・意味の解釈を決定する)解釈システムへの出入力機構の解明を試みた。具体的には、厳密に規定された小さな単位の出入力関係が派生的かつ循環的に成立する可能性を提示し、さらにはその概念的根拠を統語システムの最適性という性質から導き出す議論を展開した。また、厳密に規定された小さな単位の出入力関係が派生的かつ循環的に成立するという本研究の重要な研究成果については、ミニマリスト・プログラムの領域で研究成果をあげているNoam Chomksy(MIT),Samuel D.Epstein(Universlty of Michigan),Howard Lasnik(University of Maryland),各教授らと積極的に意見交換を行い、派生的かつ循環的に保障される統語関係の性質を明らかにしていくうえで有意義なコメントを得ることができた。
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