2004 Fiscal Year Annual Research Report
発話リズムの制御と知覚における韻律単位の機能と役割の検証
Project/Area Number |
16520262
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
近藤 眞理子 早稲田大学, 国際教養学術院, 助教授 (00329054)
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Keywords | 音声学 / 音韻論 / 心理言語学 |
Research Abstract |
今年度は日本語話者のリズムの基本単位の検証を、知覚と産出の面から行った。日本語と発話の基本リズム単位の異なるフランス語を取り上げ、仏語母語話者の発話を時間制御の面から分析し、日本語話者のフランス語発話における時間制御と比較した。これまでの研究では、仏語話者の発話は、シラブル数を基本にフレーズ長が決まる傾向がみられたが、被験者を増やした実験で、この傾向が確認された。また、日本語話者のフランス語発話も、被験者を増やして実験を重ねたが、フランス語をモーラを基本単位として知覚し、そのモーラ数に正比例して、フレーズ長が決まることが確認された。仏語話者と日本語話者の発話をさらに詳しく分析した結果、仏語話者のフランス語発話において、gArconsとgAres sont, l'Otarieとl'EAU tarit, tOUretとtOUr est等の対になっているフレーズで、実際には大文字で表記された母音長に優位な差が見られた。しかし、仏語話者の発話では、最終的にはフレーズ単位での補償関係が見られた。つまり、フレーズ長をシラブル数に順じて制御し、フレーズ全体の発話は大文字表記の母音の長短にかかわらず、対となっているフレーズ長には差が見られなかった。一方、日本語話者の発話においては、上の対フレーズの母音長に優位な差がみられ、その差がフレーズの単位で調整されず、フレーズ長では1モーラ分の長さの違いとなって現れていることが分かった。つまり、仏語話者は、物理的には異なる母音長を、音韻レベルでは認識しておらず、フレーズレベルの時間制御を無意識に行っているが、日本語話者は、物理的な長さの違いを知覚し、音韻レベルでも認識し、仏語の発話にも反映させていることが検証された。これらの結果を踏まえて、来年度は母音長の知覚とシラブル構造と音声の認識を調査する予定である。
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