2005 Fiscal Year Annual Research Report
異言語話者による音声の脳内処理に関する音響学的および生理学的研究
Project/Area Number |
16520265
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Research Institution | Nagoya University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
大岩 昌子 名古屋外国語大学, 外国語学部, 助教授 (50340360)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
軍司 敦子 国立精神・神経センター, 精神保健研究所・知的障害部・治療研究室, 研究員 (70392446)
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Keywords | 母音知覚 / 日本人 / フランス語 / 聴覚 / 視覚 / 共感覚 / 音韻習得 / 感覚モダリティ |
Research Abstract |
音韻「感覚」に焦点をあて、フランス語の習熟度の異なる学習者がフランス語の音韻を如何に捉えているかを、フランス語音の聴取時に生ずる視覚モダリティを検討することにより考察した。共感覚とは、ごく一部の人に見られる非典型的な知覚スタイルであり(Cytowic 1995)、独立した異なる感覚系にまたがり感覚の影響がある程度相互に現れることを示す。この共感覚ほど強力でないにしても感覚モダリティ間の干渉は普通の人にも起こりうるとされている。ここでは「クロスモダリティ」という現象を手掛かりに音韻に対する人の感覚を検討、そしてそれがどのように音韻習得レベルと関わるか検証した。 音韻弁別のできる学習者らが音に対して想起する色に共通性が認められ、音韻弁別のできない統制群に関しては認められなかった。この結果は、音韻弁別のできる学習者らが、ある共通した音韻「感覚」をもち、フランス語の音韻を弁別している可能性を示唆するものである。当然、学習者らがもともと音韻を色分け認識している訳ではないが、フランス語母音の複雑性を同様な感覚で体系化していることが推測される。小島(2003)によれば、従来は、局在化の考えから、大脳皮質の領野間のクロストークとして共感覚が説明されてきたが、最近の乳児の研究からの示唆をうけ、共感覚への新しい見方が出てきた。普通の成人でも通常の知覚プロセスと並行して意識下のうちに作動していると考えれば、単一モダリティで情報の一部が欠けていたり、曖昧な場合に、意識下で「穴埋め」されることも説明できるとする。こうしたクロスモダリティには当然個人差が想定されるものの、外国語音の習得を考えた場合、聴覚だけでは捉えられない母音の複雑性を、視覚モダリティで捉えることにより、意識下での「穴埋め」が十分になされ、その相互作用により結果的に新しい音を感覚的に認識できると推測されうる。
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Research Products
(4 results)