2005 Fiscal Year Annual Research Report
日本人は原語にない促音をなぜ知覚するか:音響音声学と聴覚音声学による新しい試み
Project/Area Number |
16520266
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
川越 いつえ 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (30177662)
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Keywords | 促音 / 英語音声データ / 英語からの借用語 / 音響的特徴 / 知覚実験 / 無意味語 / 単語長 / 音節構造 |
Research Abstract |
カタカナ化された英語からの借用語を見ると、knock(ノック)とknob(ノブ)の下線部のように、よく似た音連鎖がある場合には促音をもち、ある場合には促音なしでカタカナ化される。本研究は入力の英語音声に、どのような音声学的な特徴があれば促音が聞こえるのかを解明する。昨年度は音声データの作成を行った。今年度は、採取した音声データのうちのteck(/tek/), tect(/tekt/), tex(/teks/), teckle(/tekl/), tekin(/tekin/)を用いて、3回にわたり日本語話者(延べ140名)による促音の知覚実験を行った。この結果を音声データの時間的側面の計測結果と対比し、促音知覚率の高いテスト項目と低いテスト項目を峻別する時間要因を検討した。 関西音韻論研究会(2005年11月5日)の口頭発表(荒井雅子氏と共著)では、従来主張されてきた当該子音長と直前の母音長の比率は、英語音声における促音知覚の要因として不十分であることを証明した。単語長をもとにした拍数計算が促音知覚の有無と相関が高いことを示し、拍数計算の基準が、テスト語に後続する文枠の中にある可能性を示唆した。促音研究会(2006年3月16日)の口頭発表(荒井雅子氏と共著)では、テスト語と文枠の速度をそれぞれ3段階に変化させた場合の知覚率の変化をもとに、時間要因についての再検討を行う。Hirata & Whiton(2005:JASA 118(3)1647-1660)は、言語にはある範疇に対応する音響的特徴に「相対的定性」があると論じ、日本語の促音生成の場合、子音の閉鎖時間長と単語長の比率が発話速度変化の影響を受けないことから、これを促音の「相対的定性」とした。英語音声の知覚ではこれとは異なり、単語長をもとにした拍数計算に「相対的定性」が認められること、拍数計算の基準は必ずしも文枠にはないことを主張する。
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