2004 Fiscal Year Annual Research Report
16・17世紀の都市言語に関する社会言語学的・文体論的研究-ニュルンベルクを例に
Project/Area Number |
16520270
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
森澤 万里子 福岡大学, 人文学部, 助教授 (70279248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 博行 学習院大学, 文学部, 教授 (80127331)
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Keywords | ドイツ語史 / 都市言語 / 歴史社会言語学 / 文体論 / コーパス言語学 / 関係詞 / ポライトネス |
Research Abstract |
異なる種類のテキストにおける文体上の相違を分析する目的で、森澤は、同一の書き手による書簡と著作を資料として抜き取り調査を行なった。その際、例えば16世紀のニュルンベルクを代表する市民の一人、A.デューラーに関しては、彼の友人で市参事会員も務めた古典学者W.ピルクハイマー宛の書簡と1528年に出版された芸術理論書『人体均衡論四書』("[…] vier bucher von menschlicher Proportion […]",一部抜粋)では、関係詞の現れ方に差異が見られた。それにより,この差異がデューラーの書簡と他の著作の間にも見られるかという点をさらに調査することによって、また、デューラーとは異なるレベルの教育を受けたニュルンベルク市民(Ch.ショイルやL.シュペングラーなど)についても同様の分析を進めることによって、近世における書き手たちの「規範意識」、「エリート意識」、「特定の集団への強い帰属意識」に関してより詳細な考察を行う可能性があることが確認された。 高田は、調査対象として1656年にニュルンベルク(Wolfgang Endter書店)で出版されたG.Ph.ハルスデルファーの『ドイツ語の書記』("Der Teutsche Secretarius")を取り上げた。これは官房をはじめとする書記事務において礼節をわきまえた上でいかに適切に書簡を書くかを教える文体実践の便覧書である。この文体便覧書における記述(例えば称号の付け方、挨拶文の書き方、女性の心得など)を分析することによって、17世紀当時においてどのような書簡の交流が規範として見なされていたかが再構成できる。それと同時に、宮廷人と市民の間のコミュニケーションのあり方、宮廷人同士また市民同士のコミュニケーションのあり方の断片を収集することで、当時の都市言語の実相に迫ることができることが判明した。
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Research Products
(8 results)