2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520279
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐々木 勇 広島大学, 大学院・教育学研究科, 助教授 (50215711)
|
Keywords | 群書治要 / 反切 / 同音字 / 濁声点 / 類聚名義抄 / 色葉字類抄 |
Research Abstract |
本年も、基本データの入力をしつつ、部分的な成果を論文として公表した。 下記第一論文「古字書における反切・同音字注への声点加点について」は、規範的と考えられる古字書における漢音声調について、以下の点を述べた。1.掲出字に加点された声点と比較して、反切・同音字注声点は、日本漢音声調・清濁を反映した点が多い。2.反切・同音字注声点は、上声全濁字の去声化を反映し、高率の濁声点加点を行なっている。3.室町時代以降は、反切・同音字注への声点加点は、原則として、見られない。これらのことから、日本漢音声調の伝承途絶により、字書においても、漢音を示す反切・同音字注への声点加点は途絶えた、と考えた。 下記第二論文では、「金沢文庫本『群書治要』経部鎌倉中期点の漢音 -韻について-」は、昨年度、声母について分析した同資料の、韻についての整理・分析結果を述べた。その結果、本資料の加点が、当時の日本漢音のうち、中国中古音に基づいた規範的なものであることが、確認できた。 第三論文「古代漢字音の受容と展開」は、9世紀以前の日本漢字音について、概説したものである。 第四論文「鎌倉時代の日本漢音資料における濁声点加点について」では、鎌倉時代における日本漢音資料の濁声点加点率に、学問の流派・宗派による差があったことを明らかにした。加点者が所属する社会的位相によって、漢字音注が異なることを実証したものである。 第五論文「改編本『類聚名義抄』と三巻本『色葉字類抄』の漢音」では、規範的な漢音を記す辞書として、これまでともに重視されてきた両文献の音注に差が存することを述べた。その差は、漢宇を読むための字書『類聚名義抄』と、書くための辞書『色葉字類抄』との相違である。これは、両辞書に見られる位相差であり、『類聚名義抄』と比べて、『色葉字類抄』の方が日本語化した漢音を記しているのである。 以上、本年度の研究によって、「鎌倉時代における日本漢字音の位相的研究」と題した本研究が、予想通りの成果を挙げうることが確信された。
|
Research Products
(5 results)