2004 Fiscal Year Annual Research Report
外国語の読みにおける流暢さ(reading fluency)の構成概念と測定
Project/Area Number |
16520339
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山下 淳子 名古屋大学, 大学院・国際開発研究科, 助教授 (00220335)
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Keywords | 読みの流暢さ / 反応時間 / 第二言語習得 / 心的翻訳 / バイリンガル / 意味アクセス / Revised hierarchical model / L1 |
Research Abstract |
初年度の今年は先行研究の整理と予備的なデータ収集を行った。先行研究としては、計画していた3つの分野のうち、バイリンガルの言語処理研究を中心に近年の研究動向を把握するように努めた。読みの流暢さの発達には様々な要素が関係しているが、L2の読みの過程に介在するL1の影響が流暢さを妨げている可能性がある。それは心的翻訳(mental translation)と呼ばれ、L2の単語を認識した後L1に訳し、L1から意味にアクセスする過程である。上級者になるにつれて、L2における言語形式と意味との結びつきが直接的になり、流暢さも向上すると期待される。多くのバイリンガルのモデルの中でも、このようなレキシコンの意味アクセスを発達的に説明するに適したものとして、Revised hierarchical modelに注目し、そのモデルに基づいた読みの過程における意味アクセスを調べるための予備的調査を行った。本年度に行ったのは、L1とL2における、単語の形式的認識(同定)に必要な時間を調べることであった。これは上記モデルによる意味アクセスを調べるには、単語の同定が前提となるが、L2における同定にはL1より時間がかかるため、その時間を実験の中で確保しておかなくてはいけないからである。それはL2課題の遂行が遅かったとき、同定が遅いためか、心的翻訳のためかわからなくなるからである。Repetition primingという手法を使い、日本語と英語による意味判断課題を実施した。対象は英語を学ぶ日本人大学院生で、判断に要する時間を測定した。1つの単語を同定するのに50ミリ秒を設定したが、この時間はL1では十分であるがL2では短い(単語同定は十分にできない)ことが示唆された。この結果は、これからL2を刺激語として意味アクセスを調べる場合50ミリ秒以上の時間を設定しなくてはいけないことを示し、同時にL1とL2で刺激提示時間に差をもうけることの妥当性を示す根拠となる。なお、この実験に関係して、「第二言語習得研究と反応時間パラダイム-反応時間データの分析方法-」という公開セミナーを主催し、成果を多少なりとも外部の人と共有した。また、計画していた通り、読みの流暢さの発達に関係する学習者の情報面についての調査結果を、国際シンポジウムで発表した。
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Research Products
(1 results)