2005 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ語・日本語母語者の談話分析と異文化コミュニケーション
Project/Area Number |
16520354
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
宮内 敬太郎 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (90101617)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BRIEL Rita 慶應義塾大学, 理工学部, 非常勤講師 (00329004)
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Keywords | 異文化コミュニケーション / 社会的仕組み / 談話分析 / 礼儀正しい言葉使い / 面子 / 論証様式 / 非言語コミュニケーション / 話者交替 |
Research Abstract |
今年度の課題はドイツと日本の社会で展開される対面相互行為で自己主張と論証がどのような様式の言語行動により遂行されるか、その際、実践される「発言権の行使」、「話者の交替」、「聞き手のシグナル」等の非言語行動を含めた「社会的仕組み」がどのような形で現れ、両社会でそれらにいかなる意味と重要性が認知されているかを解明し、実証的に記述することであった。また対話分析に際しドイツ語と日本語の両言語に適用できる言語理論の開発が懸案となっていたが、この点については単に会話の局部的構造だけでなく、論証構造まで統語論、意味論、語用論的な観点から明示的な記述を可能とする「ジュネーブモデル」を援用することで決着をつけることが出来た。 両社会における政治討論の対照的分析により、ドイツでは焦点となる論題に関して賛否両論を正面から闘わせるのがごく一般的な討論の様式であることが確認された。この点、日本では核になる問題に関しては意見を正面から闘わせるのを避ける傾向が認められる。論証様式に関してはドイツ語母語話者では初めに結論を述べ、その後に根拠づけ(論証)を行うパターンが約90%を越す頻度で確認できている。これに対して日本語の政治討論ではこれと同じ様式が約60%を占め、これとは逆の初めに問題の背景等の説明を行い、後に結論を述べる様式が約36%の割合で現れている。「発言権」に関わる非言語行動では、ドイツの討論では政治家は一度、発言権を握るとそれを奪われまいとして、視線を特定の政治家に留まらせずに早口に話し続ける態勢を取る。この時、聞き手は発話者に視線を合わせたまま黙って傾聴する姿勢が一般的と言える。これに対し日本の政治家は頭を縦に振りながら「ええ」「はい」のような「聞き手のシグナル」を発信する非言語行動が頻繁に見られる。 これら研究成果については2005年秋季日本独文学会(10月10日)で口頭発表を行い、年度末には論文として公刊することが出来た。
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Research Products
(3 results)