2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520374
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
保坂 高殿 千葉大学, 文学部, 助教授 (30251193)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和泉 ちえ 千葉大学, 文学部, 助教授 (70301091)
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Keywords | 伝統主義 / 民主政 / アテナイ / 不敬罪 / ソクラテス裁判 / ペリクレス / 自然学的無神論 / 敬虔 |
Research Abstract |
今年度は主に、古代アテナイの伝統主義の成立過程を文献資料に基づき検証するために不敬罪訴訟の起源に着目し、その生成の歴史的経緯を明らかにした。前7〜6世紀のソロンの時代には存在しなかった不敬罪および不敬罪訴訟はアテナイ民主政の発展と歩調を合わせながら次第にその輪郭を明瞭にしたことが「敬虔」の用語法の分析から読み取れる。これは「敬虔」が5世紀後半に至って共同体の規範の弛緩を補うべき社会的紐帯としての役割を担わされたことの結果であり、公職者資格審査において市民的義務と並んで家族的および氏族的義務の履行が重要な要件と見なされたことと軌を一にする。伝統主義が外国文化との接触によって触発されたローマの場合とは異なり、アテナイでは内政上の、および制度上の理由が大きな非常を占めた点で対照的である。この研究成果の一部は「古代アテナイにおける不敬罪訴訟の起源」と題する論文で発表した。またキリスト教文化がローマ文化を如何に摂取し、自らの伝統を創造していったかの問題をも取り扱い、教会文化を象徴するクリスマスに着目してその成立過程を考察した。その成果は「クリスマスの起源」と題する論文で発表した。 また紀元前5世紀ペリクレス期アテナイ当時復活した父祖伝来の各種の祭儀の由来およびその実質的伝統について、とりわけスパルタの伝統主義との比較から検討を加え、アテナイにおける復古主義の台頭の背景およびその意図の在処を描出する証拠としての文献史料を収集調査した。特に、ペリクレス周辺の哲学者、自然哲学者諸家に対して向けられた無神論の咎に言及する史料の文献学的位置づけを再査定した。
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Research Products
(3 results)