2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520374
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
保坂 高殿 千葉大学, 文学部, 助教授 (30251193)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和泉 ちえ 千葉大学, 文学部, 助教授 (70301091)
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Keywords | キリスト教 / ローマ / デキウス・ウァレリアヌス / 民間信仰 / 迫害 / ヘレニズム / ピタゴラス / プラトン |
Research Abstract |
今年度は古代地中海文化圏における伝統の形成と変容の様相を解明するため、昨年度着手した作業を継続する形で3世紀後半から4世紀初頭にかけての帝国の対キリスト教政策を分析し、これをもって1世紀から4世紀に時代が推移するに従って生じた帝国の教会に対する姿勢の変化に関する鳥瞰図の作成を試みた。また一方で教会内における民間信仰の受容状況を調べ、4世紀におけるキリスト教皇帝による帝国キリスト教化の限界の調査した。 1.後期迫害においても帝国の対教会政策は治安対策的側面を決して失っていないこと、しかし同時に祭儀への強制参加によって帝国秩序回復を目指すという、迫害史において新しい局面が現れたことを明らかにした。 2.4世紀になって帝国はそれまで軽んじてきた教会の組織力を初めて認知するに至り、この認知が弾圧の動機であり、同時に迫害終了後の教会保護政策への転換の動機でもあった。にもかかわらずコンスタンティヌス以降帝国のキリスト教化が遅々として進まなかったのは、一方で皇帝の異教的宗教意識の存続に、他方では教会の古き伝統、すなわち世俗への不服従の原則の堅持に原因があったことを明らかにした。 3.プラトンアカデメイアで再編成された五つの数学的諸学科とアリストテレス的論証科学の方法論が、ヘレニズム期のアレクサンドリアを拠点とする学問活動の中でどのように受容され変容したのか、その次第をプトレマイオス『天文学』・『地理学』やエウクレイデス『原論』等を新たな角度から読み解く作業を通して描出し、論考にまとめた。また、ローマ帝政期においてギリシア的学芸がどのように受容され変容したのか、という古典的テーマに関する新たな切りロを、『自然誌』を著した大プリニウスとギリシア的普遍教養の関係を根本的に洗い直す作業を通して再検討し、論考にまとめた。
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Research Products
(3 results)