2004 Fiscal Year Annual Research Report
日韓文化の比較-国宝臼杵石仏の真名野長者伝説と韓国国宝弥勒寺址石塔の末多王伝説-
Project/Area Number |
16520378
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
金 賛會 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋マネジメント学部, 教授 (00331124)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 一信 立命館大学, 文学部, 教授 (20105365)
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Keywords | 真名町長者伝説 / 末多王伝説 / 炭焼き / 薯童 / 鋳物師 / 鍛冶屋 / 蓮城寺 / 臼杵石仏 |
Research Abstract |
本研究は、日本大分県の国宝臼杵石仏と蓮城寺(内山観音)の「真名野長者伝説」と韓国国宝弥勒寺址石塔の「末多王伝説」の歴史的比較研究を行なうことに目的がある。今回の研究では、大分県臼杵市・三重町と韓国現地を訪問して資料調査などを行ない、その伝説の背景にある歴史的背景を探ることによって伝説・物語の成立過程、文化交流の歴史を展望することができた。 『日本書記』によれば、「末多王伝説」の主人公である百済国の末多王は、九州(筑紫国)出身で百済国に渡り、王様になった人物であることが考えられる。特に今回の研究、現地調査を通して次のような成果が得られた。 (1)韓国の研究者は従来、「末多王伝説」の主人公である「薯童」について、「薯を掘る童子」と解釈してきた。しかし、日本の「真名野長者伝説」の資料、伝承地を調査・検討した結果、「薯童」は単なる薯を掘る童ではなく、砂鉄・黄金を掘り出し、炭を焼いて鉄を製錬する鋳物師・鍛冶族で、その財力などをもとに百済の王様(末多王)になったことが考えられる。 (2)韓国の「末多王伝説」の内容は日本の「真名野長者伝説」にきわめて類似しているが、「真名野長者伝説」では主人公の名が炭焼き小五郎であり、炭焼きは鋳物が主業で、炭焼きは副業である点、「イモヅル」とか「金ヅル」という言葉は鉱山師が使いはじめたこと、大分県宇佐地方では炭をイモジというところから考えると、韓国の薯童も、単なる「薯を掘る童子」ではなく、「炭焼きの童子」、または「鋳物師」か「鍛冶屋」とみるのが妥当である。また、現地調査などを通じて、両国の伝説が歴史的にも文化的にも深く関わりがあることも確認できた。 今後の課題としては、真名氏族と末多王との関わりなどを探ることによって伝説・物語の成立過程を明らかにし、真名野長者伝説を通して古代においての九州と韓国の文化交流の歴史を究明したい。またその研究成果を地域に還元したい。
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Research Products
(1 results)