2006 Fiscal Year Annual Research Report
近世近代移行期における大規模豪農と地域社会構造に関する総合的研究
Project/Area Number |
16520381
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
岩田 浩太郎 山形大学, 人文学部, 教授 (30184881)
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Keywords | 豪農 / ヘゲモニー / 城下町商人 / 商業 / 青苧 / 幕末維新 / 全国市場 / 羽州村山郡 |
Research Abstract |
本年度の研究課題「III近世近代移行期における地域社会のヘゲモニー構造の変動過程に関する総括的研究」を以下の(1)〜(4)の柱をたてて実施した。 (1)幕末〜明治前期における地域社会のヘゲモニーと政治情報に関する研究 羽州村山郡の大規模豪農のうち、堀米家を対象に研究を実施した。堀米四郎兵衛家(本家)・堀米則吉家(別荘)の政治経済活動の史料調査および堀米直蔵家(分家)の新史料発掘により、堀米家の幕末維新期の諸活動の全貌を把握する基礎資料を得た。とくに、幕末期の政治情報入手にあたって一族の神職和田新九郎や豪農間ネットワークが重要な役割を果たしたことを解明した。 (2)大規模豪農-中小豪農・村役人の間の諸ヘゲモニー関係に関する研究 羽州村山郡の大規模豪農のうち、堀米家に関しては近隣の豪農宇野与蔵家や自小作層で村役人を務めた宇野仁左衛門家の史料発掘、さらに郡中惣代渡辺忠左衛門家の史料調査を実施した。また、柏倉家に関わっては一族を束ねた柏倉惣右衛門家(分家)や小作支配人を務めた養老屋吉蔵家などの史料調査を実施できた。地域の信望を得て成長してくる中小豪農や村役人を基盤にしながらヘゲモニーを確立していく大規模豪農の地域編成の動態に関する基礎的な個別事例を得ることがてきた。 (3)近世後期〜明治前期における全国青苧市場の変動に関する研究 従来解明が進んでいない青苧の全国市場変動について各地の史料調査を実施した。奈良晒生産の停滞と越後縮・八講布・能登上布生産の隆盛という麻織物機業地の盛衰を背景に青苧の流通構造が変化したことを確認し、村山の豪農商がこうした経済変動を積極的にとらえて成長したことを解明した。 (4)近世後期〜明治前期、豪農商における経済活動の全国的位置に関する研究 山形城下町の巨大商人をはじめ村山豪農商の広域的な商業活動の実態について史料調査をおこなった。奥羽にまたがるその商業活動を黒沢尻(岩手)・横手(秋田)・村田(宮城)・梁川(福島)などの各地の商人文書から検証し、ヘゲモニー主体として彼らが成長する経済的基盤を検討した。また、長谷川家を事例に、山形城下町巨大商人の広域的集荷網の形成と蓄積様式について解明をおこなった。 以上の全国的な史料調査と研究のために、旅費を中心に補助金を使用した。
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