2006 Fiscal Year Annual Research Report
近代中国における植民地医学の展開と中国社会への影響に関する研究
Project/Area Number |
16520414
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
飯島 渉 青山学院大学, 文学部, 教授 (70221744)
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Keywords | 植民地医学 / 帝国医療 / 日本住血吸虫病 / 小宮義孝 |
Research Abstract |
昨年度までの調査・研究を継続し、近代中国における列国の植民地医学、特に近代日本の植民地医学の特徴を明らかにし、その20世紀中国社会への影響、特に医療・衛生制度および社会制度への影響を検討した。 本年度、特に注目したのは、寄生虫学に関する領域である。例えば、日本住血吸虫病研究は、近代・日本の植民地医学の中核の一つであり、日本国内での研究を基礎に、台湾、朝鮮などの植民地でも研究が進められた。また、中国では、上海自然科学研究所で寄生虫学の研究が進められた。 以上の調査・研究を進めるため、旧パストゥール研究所である上海CDC (Center for Disease Control)での調査と意見交換、さらに、厦門でも研究者との意見交換を行なった。研究成果の一部は天津で開催された国際会議で発表するとともに、日本住血吸虫病に関連する研究論文を作成した。 植民地医学の発達とその行政化としての帝国医療の展開は、経済政策などと比較しても、植民地の社会秩序により介入するものであったため、社会を大きく変化させる役割を果たした。そのうち、日本住血吸虫病に関わる領域は、植民地医学・帝国医療の歴史的意味を象徴するものであった。 上海自然科学研究所で寄生虫学研究を進めた小宮義孝は、中華人民共和国成立以後、中国共産党に対して日本住血吸虫病対策のあり方を提言した。中国共産党は、小宮の提言を基礎としながらも、それを徹底した大衆動員によって実現した。その背景には、1950年代に急速に進められた社会主義化=農業集団化があったと考えられるのである。 なお、経費は、上記の研究のための、文献の購入、旅費、資料整理のための研究協力者への謝金などに充当した。
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Research Products
(2 results)