2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520415
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮宅 潔 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (80333219)
|
Keywords | 張家山漢簡 / 刑罰制度 / 郡県制度 |
Research Abstract |
本年度は、前年度に引き続き、張家山漢簡《二年律令》の整理・訳注作業に携わる一方で、それを利用した刑罰制度、および郡県制度の再検討を行った。 刑罰制度の分析については、前年度からの作業を整理して『東方学報』誌上に「有期労役刑体系の形成」を発表した。これは刑罰のなかでも、とりわけ労役刑に注目したものである。秦代の労役刑はその多くが無期であったが、それら複数種の無期労役刑は様々な要素により等級づけられていた。なかでも重要なのは刑徒の家族への処遇で、最も重い労役刑徒の家族・財産は国家により没収され、妻子は売却されることすらあった。この没収制度の存在は、無期労役刑の体系を成立させる上で、非常に重要な役割を果たしていたが、前漢文帝の元年に至って廃止されてしまう。没収制度廃止の背景、及びその余波について考察し、さらには、その十三年後に起こった刑制改革(身体毀損刑の廃止、すべての労役刑の有期化)との因果関係を論じた。 以上の作業のなかで、没収制度の廃止、刑制の改革が行われた文帝時代について、その位置づけの重要さが浮き彫りになってきたため、文帝期の諸改革を当時の政治課題から総合的に分析することを試みた。その成果の一部が『史林』誌上に発表した「「二年律令」研究の射程」である。そこでは、文帝期の最重要課題であった諸侯王対策をとりあげ、帝国の東方に広大な領地を持っていた諸王たちに対して、文帝が如何なる態度で臨んでいたのか、再検討を行った。従来、文帝はこれら諸王を抑制する政策を一貫して進め、全土の郡県化、すなわち直轄支配を目指したものとされてきた。二年律令にも抑制策の一端が窺えるとして、こうした見方を補強しようとするむきもある。だが二年律令に見える皇帝と諸王国との関係からは、両者の間に不断の緊張関係があり、皇帝が王国の廃絶を窮極的な目標としていたとは断言できない。むしろ文帝は諸王との共存関係に満足しており、同時の優先課題は他にあったことを、上の論文においては強調した。
|
Research Products
(3 results)