2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520415
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮宅 潔 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (80333219)
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Keywords | 張家山漢簡 / 中国古代 / 爵制 |
Research Abstract |
本年度は、前年度に引き続き、張家山漢簡《二年律令》の整理、検討を進める傍ら、それを利用した刑罰制度、及び爵制の再検討を行った。 漢代には広範な成人男子に爵が賜与され、名籍等に名前が記載される際にも、その者が帯びている爵位が明記された。この制度は漢王朝に独特のものとして研究者の注目を集め、多くの議論が重ねられてきた。特に日本において、爵制研究に大きな影響を与えたのは西嶋定生の『中国古代帝国の形成と構造』(東京大学出版社、1961)であった。西嶋は爵位の賜与を通じて形成される社会秩序に着目し、皇帝はかかる秩序の賦与者として尊重され、広く皇帝支配が受け入れられることとなった、と論じた。この爵制論は、単なる制度の復元に止まらず、専制支配確立の背景にまで切り込んだもので、その後の爵制論、および国家論は西嶋説を一つの軸として展開したといっても過言でない。 しかし張家山漢簡の出土によって、爵制に関する新たな知見が得られ、西嶋説の基盤となっていた、爵制に対する理解が揺らいでいる。たとえば西嶋は、爵位は世襲されないという前提の下に論を進め、爵位の高下は基本的に年齢の上下と一致する、と主張したが、張家山漢簡には、爵位の世襲が明記されていた。申請者は張家山漢簡《二年律令》を手がかりに当時の爵制を復元する一方で、爵位はそれに伴う諸々の特典ゆえに尊重されており、基層社会の秩序とは必ずしも結びついていないことを論じた。以上の内容を「漢初の二十等爵制-民爵に附帯する特権とその継承-」との題目で論文にまとめ、発表した。 本年度は海外研究協力者であるエノ=ギーレ(ドイツ・ミュンスター大学)の招聘を予定していたが、先方の都合により見送り、書簡・メールによって成果報告書に向けて意見を交換した。
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Research Products
(1 results)