2005 Fiscal Year Annual Research Report
近世イランにおける都市、農村、遊牧民に関する経済史的研究
Project/Area Number |
16520424
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Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
山口 昭彦 聖心女子大学, 文学部, 講師 (50302831)
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Keywords | イラン / オスマン朝 / サファヴィー朝 / 経済史 / データベース |
Research Abstract |
本研究は、サファヴィー朝崩壊直後にイラン西部を占領したオスマン朝が作成した一連の検地帳を分析することで、当時のイラン社会における都市、農村、遊牧民のあり方を探ろうとするものである。昨年度、トルコにおいて当該検地帳の複写を完了したので、本年度は、これらオスマン検地帳の情報をコンピュータを使ってデータベース化するとともに、これらの史料を補完する、あるいはその理解に利用しうる史料として、イラン側の文書史料の調査と収集を行った。夏と冬、合計1ヶ月半の間イランに滞在し、もっぱらゴレスターン宮殿と国立公文書機構で調査を行った。とくにゴレスターン宮殿では、19世紀後半、カージャール朝下のイラン各地で行われた人口統計資料を閲覧し、その一部(コルデスターン州に関する部分)を複写することが出来た。オスマン検地帳が作成された18世紀初頭とは150年ほどの隔たりがあり、また様式も異なるために両者の比較は容易ではないが、これら「国勢調査」資料は、検地帳の解釈に役立つとともに通時的な変化をとらえるための手がかりを与えてくれると思われる。国立公文書機構においては、イラン西部諸地域、とくにコルデスターン州の社会経済史に関する文書の有無を調査した。その結果、19世紀以前についてはごくわずかな文書が数点残されているだけであったが、19世紀末、とりわけ20世紀以降については、都市はもちろんのこと、農村や遊牧民、さらにワクフに関する、すくなくとも数百点以上に及ぶ、さまざまな文書が残されていることが確認できた。これらの史料もまた、本研究の対象時期とは時代が大きく離れているが、検地帳が作成された時期の社会経済的状況を探るための貴重な材料となることが予想される。これら史料収集のほか、検地帳データのコンピュータへの入力と収集した史料の解読を進めた。
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