2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520430
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
谷口 淳一 京都女子大学, 文学部, 准教授 (90293844)
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Keywords | 13世紀 / シリア / アレッポ / 歴史叙述 / 伝記 / 知識人 |
Research Abstract |
1.主たる研究対象である『アレッポ史の探究』のデータベース作成作業は、計画よりもかなり遅れている。本書の伝記集部分に項目として立てられている人名の入力作業が8月にようやく終了したが、データベース作成は見込み通りには進まなかった。最終的には、本年度中に全体の約10%の作業が終了した。 2.『アレッポ史の探究』を北シリアの歴史叙述の流れの中に位置づける作業の一貫として、昨年度に引き続き、地方史史料に見える宗教施設のデータを抽出し分析を試みた。本年度は、12世結から15世紀までを対象に、宗教施設の運営規定について分析を進めた。その結果、明らかになった点は以下の通りである。 (1)ワクフ財源の大部分は、アレッポ市街の商工業施設や公衆浴場やアレッポから50km圏内の農地などであった。(2)施設の設立や維持に中心的な役割を果たしたのは、アレッポの総督や住民という現地に直接利害関係をもつ人々であった。(3)以上のよこうに、宗教施設の設立・維持は一地域内で完結する傾向にあり、政治的には中央集権化が進んだマムルーク朝においても、地方都市の宗教施設の設立・維持に関しては、カイロのスルターンの関与は少なかった。この傾向は、シリア中部のダマスクスにも共通するが、聖地エルサレムは現地に直接利害関係を持たない設立者を多く惹きつけた点で際立っていた。ただし、宗教施設の財政基盤の大半が地城内にあったという点では、エルサレムも同じであった。 本年度の研究成果は現時点では未公表であるが、成果の2についでは『東洋史研究』第66巻第1号(2007年6月発行予定)に掲載予定の論文で公表する予定である。
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