2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520430
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
谷口 淳一 Kyoto Women's University, 文学部, 准教授 (90293844)
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Keywords | 13世紀 / シリア / アレッポ / 歴史叙述 / 伝記 / 知識人 |
Research Abstract |
北シリアの中心都市アレッポの地方史叙述とそれを担ったウラマー(ムスリム学者・知識人)について、13世紀を中心に据えて研究を進めた。本年度の成果は、以下の2点である。 1.アレッポ地方史『アレッポ史の探究』のデータベース作成作業を継続した。作業は予定通りには進まず、全体の約20%の作業が終了したのみで年度末を迎えた。データベース化は一部にとどまっているが、作業を進める過程で、この書物の以下のような特徴が明らかになってきた。本書は原則としてイスラーム創始期(7世紀)から13世紀半ばに至るアレッポに関わる人物の伝記集であるが、対象範囲を非常に広く取り、現在のトルコ共和国に属するキリキア地方に縁のある人物も収録している。ここから当時の地域の捉え方がうかがえる。また、収録人物に伝承学者が多く含まれる点は同時代の多くの伝記集と共通するが、政治権力者や軍人の情報もかなり収録されている。 2.『アレッポ史の探究』が編纂された時代背景として、12世紀から13世紀にかけて政治権力とウラマーの結びつきが強まっていた状況を明ちかにした。12世紀前半に北シリアに進出したザンギー朝は、北シリア以外の地から到来するウラマーを要職や学院の教授に任じる一方で、旧来の名家に属するウラマーの既得権を奪っていった。その過程で、数度にわたって反乱が生じるが、最終的には旧勢力が屈服していくこととなった。13世紀に入ると一部の名家が勢力を回復するが、それは名家のウラマーが新たな支配者であるアイユーブ朝政権による統制と保護を積極的に受け入れるようになった結果であった。『アレッポ史の探究』は、このような状況下でウラマー名家の一員によって編纂された書物である。本書が類書に比べて政治権力者や軍人の伝記を多く含む理由の一つとして、ウラマーと政治権力が以前にも増して結びつきを強めたという点が指摘できる。
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Research Products
(2 results)