2005 Fiscal Year Annual Research Report
共和政期ローマ貴族の「家」認識--貨幣イコノロジーの分析を手がかりに--
Project/Area Number |
16520432
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
安井 もゆる 岩手大学, 教育学部, 助教授 (70241502)
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Keywords | 共和政ローマ / ノビリタス / ローマ貨幣 |
Research Abstract |
本年度は昨年に引き続き、ローマ共和政期において家門を誇示すると思しき貨幣図像をピックアップし、リストを作成する作業を継続し、完了した。その結果、前189/0年より第二次三頭政治期の前41年までの間に、計97種の図像を析出することができた。これらを図像内容に応じて分類すると、(1)神・伝説的人物の子孫、16種、(2)祖先の武勇・軍功、45種、(3)祖先の民事的行政的功績、15種、(4)祖先の宗教的功績、15種、(5)祖先の祭司職、16種、(6)その他、9種、となる。同一家系による同一内容の重複をひとまとめに計算すると、(1)9種、(2)31種、(3)11種、(4)10種、(5)12種、(6)7種、となる。全体的傾向としては、貨幣鋳造責任者の一族の国家的功績が、モチーフの中心をなしており、このことは共和政期の家門意識と国家意識との密接な結合を表している。他方で、神話的世界や祖先の祭司職が描かれるところに、上記にとどまらない家門意識の重層性が窺える。貨幣鋳造責任者の家系のランクごとに区分すると、祖先の国家貢献を強調する態度は、コンスル家系においてより顕著であり、新人家系では対して一族の神話的起源の強調度合いが高まる。時代的変化については、家門のモチーフが前130年代より急増することは、つとに先行の諸研究により指摘されていたところであるが、これを前139年のガビニウス法制定という一つの出来事に帰するより、前2世紀前半より徐々に進行しつつあった、貨幣図像の表現方法そのものに対する考え方の変化によるもの、とするのがより妥当であろう。
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