2006 Fiscal Year Annual Research Report
ミケーネ社会からポリス社会への構造転換に関する統合的研究
Project/Area Number |
16520438
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
周藤 芳幸 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (70252202)
|
Keywords | ギリシア / ポリス / ミケーネ文明 / 初期鉄器時代 / エジプト / 傭兵 / 植民 / サイス朝 |
Research Abstract |
本研究において、これまで1年目には伝統的なミケーネ社会像の構築に大きく寄与した線文字B粘土板文書の読み直しを、また2年目にはギリシア初期鉄器時代を特徴づけるレフカンディやオロポスなどの「不安定な集落」の様相を個別に検討するとともに、エジプト、キプロスにおける状況を検討した。本年度は、これらの成果を東地中海規模で統合する目的で、、ポリス形成期のギリシアと密接な関わりがあったにもかかわらずギリシア史固有の領域ではあまり重視されてこなかった南イタリアの状況を分析することにより、これらの地域における植民市建設がギリシアにおけるポリスの空間構造の発展過程に密接に関与していたことを明らかにし、M・H・ハンセンらがポリス研究を通じて提唱していた植民市の先進性を確認した。しかし、2005年3月にロンドンで行ったコロキアムでも指摘したように、ハンセンらの研究にはいわゆる「蛮族ポリス」への目配りが欠けているため、今年度も昨年度に続いてエジプトで現地調査を行い、前7世紀におけるサイス朝の興隆にともなうエジプトでのギリシア人傭兵の定住拠点の建設が、西方植民市の建設と相互補完的な機能を持っており、これらの定住拠点とギリシア世界(とりわけエジプトヘの傭兵を輩出したイオニア地方やロドスなどの東ギリシア諸都市)との間の人的移動が、西方植民市建設による人的移動と交差することによって、この時期ギリシア本国でのポリス形成に決定的な重要性を持っていたことを明らかにした。このような成果について、国際的なアカデミアに向けては2006年10月にはスタンフオード大学で招待講演を行うと同時に、一般向けには京都大学学術出版会から単著を刊行することで研究成果の社会への還元も図った。
|
Research Products
(3 results)