2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520443
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
佐久間 亮 徳島大学, 総合科学部, 教授 (30231335)
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Keywords | 自然保護 / 国立公園 / 英領植民地 / 文化衝突 / ハンティング |
Research Abstract |
今年度は本研究の最終年であったので、これまでの研究のまとめと、英領タンガニーカにおける野生動物保護の実態の解明に取り組んだ。 まず、この研究で3年間にわたって取り組んできたのは、英帝国の野生動物保護のグローバル・ネットワークの歴史的特質についてである。すでに、昨年度の研究で明らかにしたように、20世紀初頭に結成された帝国野生動物層保護協会を中心に築かれたネットワークは、当初は英領アフリカの植民地官僚と本国エリートを結びつける役割を果たしていたが、第一次世界大戦後、英領アジアへ、さらに30年代にはその社会的基盤の変化に相まって、イギリス帝国の枠を越えた保護ネットワークの形成に向かいつつあった。 このネットワークと英領アジア、とりわけ英領マラヤにおける保護運動の関連、および英領アジアにおける保護運動とアフリカのそれとの比較がまず、本年の研究の課題であった。そこで、具体的にはマラヤに在住し、上記ネットワークの中心を担ったセオドア・フーバックに関する史料の収集をしつつ、かれの活動と、ジョージ五世国立公園(現、マレーシアのタマンネガラ国立公園)の形成にいたる足取りを辿った。 その結果、英領アジアにおける国立公園形成の動きと、上記の保護のネットワークが極めて密接な関係にあったこと。アジアにおける野生動物保護運動が、英領アフリカの経験をふまえておこなわれていったこと。しかし、アフリカの経験と異なるのは、野生動物保護運動にとっておもな障害となっったのが、土着民の様々な権利意識、抵抗などよりも、白人プランテーション所有者による反対運動(とりわけ、英領マラヤではゴムプランテーション所有者の圧力団体の抵抗が、植民地当局の一定の支持を勝ち取ったことで、大きな障害となった)であったことなどがあきらかになった 最後に、英領タンガニーカにおけるセレンゲティ国立公園とアルーシャ国立公園形成の過程について史料を収集しつつ、ケーススタディに取り組んだ。とりわけ、後者については、その設立が、当地に伝統的に住むメルー族の激しい抵抗を惹起したこと。さらに、その抵抗がかれらの伝統的な土地に対する集合的権利意識に基づくことなどが明らかになった。
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