2004 Fiscal Year Annual Research Report
古代ギリシアのポリスにおける碑文慣習文化に関する研究
Project/Area Number |
16520450
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
師尾 晶子 千葉商科大学, 商経学部, 助教授 (10296329)
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Keywords | 古代ギリシア史 / 史料学 / 碑文学 |
Research Abstract |
平成16年度は,アルカイック期から古典期の古代ギリシアの碑文慣習文化について,全体的な見通しを立てることに重点を置いた。論点を要約すると以下のとおりである。(1)少なくとも古典期アテナイにおいては,碑文は単にシンボルとして建てられたのではなく,見られること,読まれることを意識した上で建立されていた。(2)その一方,ある決議・報告を碑文として公開するかどうかについては,意図的に選択されていた様子がうかがわれる。(3)外交にかかわる決議の建立の比率が高かったのに対して,内政問題にかかわる決議についてはあまり建立されなかった。(4)碑文は読まれることを意識して建立されたとはいえ,碑文の建立場所やその内容を理解していたのはエリートに限られており,一般市民にとってはシンボルとしての存在にとどまっていたと考えられ,その点で,エリート層と一般市民層との間の乖離が見られる。(5)パルテノン神殿の宝物目録を記した碑文群を分析すると,この点はさらに明らかになる。すなわち,エリート層内部での情報の共有と外部への不完全な公開=隠蔽といった特徴が浮かび上がってくる。(6)以上は,これまであまり検討されてこなかったアテナイ民主政のある側面を明らかにするものでもある。(7)ひるがえって,アルカイック期に目を移すと,私的碑文の出現にくらべて,公的碑文の出現がかなりおくれていることが注目される。(8)しかも公的碑文においても,初期の段階ではその内容はもっぱら奉献であり,決議碑文の出現はさらにおくれる。(9)碑文建立文化の出現は,奉献という行為と深く結びついており,貴族文化から生まれたものと言えそうである。(10)アルカイック期については,この知見に基づいた上で,細かな史料整理と数量的分析が必要となる。
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Research Products
(4 results)