2006 Fiscal Year Annual Research Report
古代ギリシアのポリスにおける碑文慣習文化に関する研究
Project/Area Number |
16520450
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
師尾 晶子 千葉商科大学, 商経学部, 教授 (10296329)
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Keywords | 古代ギリシア史 / 史料学 / 碑文学 / 碑文文化 |
Research Abstract |
平成18年度は,アテナイのアクロポリスに建立された公的碑文の機能について、その種類と時間的分布から考察することを中心課題とした。前年度取りかかった私的碑文と公的碑文との相互関連性についての研究の延長線上にあるテーマである。具体的には、前年度末におこなった、特定領域研究「東アジアの海域交流と日本伝統文化の形成」の石刻史料公開研究会「歴史史料における石刻史料の意味と役割」での口頭報告をもとに執筆した「碑文を見る人・碑文を読む人-公的碑文建立の公開性と閉鎖性」『碑石は語る』(アジア遊学91)がその成果の一部にあたる(詳細は発表論文一覧表参照)。また、12月には「モニュメントとしての碑文」というタイトルで口頭報告をおこなった(アルゴ会)。これらにおいて、(1)公的碑文は、実際にかなり見られており、陶器画やオストラコンその他においてしばしば模倣されていたこと、(2)公的碑文に名を刻まれた当事者にとっては、刻まれたこと自体が名誉(あるいは内容によっては不名誉)であり、名誉の再確認のために碑文は詳細に閲覧され得たことを明らかにした。(1)については、模倣とともにパロディ化されたものについても検討することで、さまざまな社会グループにおける公的碑文に対するイメージとその表現について明らかにできるのではないかという見通しをもつことができた。平成19年度にその研究成果の一端を国際学会で報告する予定である。(2)からは、「名を刻んで残すこと」の社会的意味について考察することの必要性が浮かび上がってきた。これも平成18年度中には仕上がっていないが、平成19年度に口頭報告および論文執筆がおこなわれる予定であり、その準備をすすめてきた。 全体として、平成18年度の研究は、19年度に予定されている2つの国際学会での報告の準備のための史料の整理と分析とに多くの時間を費やすこととなった。
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Research Products
(3 results)