2005 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀前半のアメリカ合衆国における大量消費社会の成立とジェンダー・人種・階級
Project/Area Number |
16520452
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
松本 悠子 中央大学, 文学部, 教授 (30165914)
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Keywords | アメリカ合衆国 / 20世紀 / 消費 / ジェンダー / 人種 / 住宅 |
Research Abstract |
1.昨年度行った研究成果に基づいて、共同研究を刊行した。6人の研究者によって、アメリカ消費社会の歴史を、19世紀から現在まで考察したものであり、本書は、単なる通史ではなく、消費という行動がアメリカ社会の構造や生活様式にどのような影響を与えたかを論じることを目的とした。そのなかで、二十世紀初頭を担当し、大量消費社会の到来が、アメリカ社会の同質化だけでなく、ジェンダー、階級、人種に関して更なる差異化を促したと論じた。編集も行ったため、アメリカ史全体の理解のために、消費が有効な視座である事を確認した。 2.本年度の研究実施計画にあるロサンゼルスなどにおける資料収集は、校務などのために実施できなかった。しかしながら、国内の京都女子大学、同志社大学などに所蔵されている雑誌等の資料を収集した。また、国内にいながら、マイクロフィルムによる20世紀初頭の住宅関連の雑誌、部分的に公刊されたセンサス、住宅関連の文献などを入手する事ができた。それらの史料をもとにして、ロサンゼルスの20世紀初頭から、1930年代までの住宅の建設のプロセスや住宅をめぐる人種間の紛争の具体的状況を分析した。特に、ロサンゼルス郊外のパロス・ヴェルデスという新興の住宅地に関する史料を分析して、同質的な共同体が中産階級の白人の住宅地の理想であったことが明らかとなった。共同体内では民主主義に基づく自治が行われたが、それは同じような住宅と同じようなインテリアおよび庭が持てる人々が同じ価値観を持てる共同体の成員であるという前提に立っており、アメリカ社会の基盤である草の根民主主義の二〇世紀のありようが消費行動と密接に結びついているのではないかと推論するに至った。
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