2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520478
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
小林 謙一 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 文化財情報研究室長 (70110088)
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Keywords | 重装騎兵 / 鎧甲 / 固定綴 / 可動綴 / 甲胄 / 高句麗 |
Research Abstract |
5世紀第2四半世紀の日本列島に出現する新式の武器・武具による武装は、韓半島を経由するが、本来的には、中国東北地方を源流とする騎兵装備であった蓋然性が高まった。源流と考えられる中国東北地方における騎兵装備の成立時期を検討するにあたり、まず、中国における甲胄について分析をおこなった。 中国においては、古くからさまざまな素材でつくられた甲胄が各地から出土しているが、鉄製甲胄に関しては、主として漢代以降に普及している。漢代の鎧甲は、小札の形状の違いに基づき、鞐形小札を用いる鎧甲Iと長方形小札を用いる鎧甲IIに分けることができる。これらは、いずれも上下方向に可動性を持たない固定綴によって組み上げられていた。一方、4世紀代の中国東北地方においては、長方形小札を可動綴にした鎧甲IIIの存在が確認され、馬甲・馬胄が共伴する場合もある。ここにおいて、重装騎兵装備は、中国東北地方において、遅くとも4世紀には成立していたと考えられるのである。とともに、可動綴による鎧甲IIIの出現と騎兵装備の成立が、相呼応している可能性を示している。これに対し、漢代の胄は、鞐形の小札、縦長の梯形鉄板等で胄鉢を構成し、胄鉢を構成するにあたっての綴じ方も含め、多様性に富む。なかでも、梯形鉄板を用いた胄は、系譜的に、4世紀代の中国東北地方における騎兵装備の胄に継承されるものである。 4世紀代、中国東北地方で成立した重装騎兵装備は、主として馬甲、馬胄と鎧甲III、梯形鉄板の胄及び付属具としての頸甲等で構成されており、5世紀に韓半島南部において確認される重装騎兵装備も、基本的に同じ内容であった。両地域の間に位置する高句麗においても、最近、4世紀後半から5世紀代に築造された高句麗王陵の報告が刊行され、断片的な資料ではあるが、詳細に検討すると、古墳壁画に見られるような重装騎兵の武装が実際に普及していた様相が窺えるのである。これにより、重装騎兵装備に関して、中国東北地方から韓半島にいたるまでは、同一の系譜で捉えうることが明らかになり、今後、より詳細に比較検討することにより、日本列島における騎兵装備の受容に見られる状況を、より明瞭に把握しうる見通しをえた。
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Research Products
(1 results)