2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520478
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
小林 謙一 National Research Institute Cultural Properties, Nara, 企画調整部, 部長 (70110088)
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Keywords | 騎兵装備 / 重装騎兵 / 挂甲 / 可動綴 |
Research Abstract |
4世紀の中国東北地方や高句麗古墳の壁画で確認される騎兵装備のなかで、ヒトが着用する鎧は、漢代にあった2種の鎧甲のうち、鞐形あるいは楕円形に近い小札を用いた鎧甲ではなく、細長い長方形の小札を用いた鎧甲の系譜につながることが明らかとなった。ただ、漢代の後者の鎧甲では、胴部の小札を固定綴にしているのに対し、4世紀の騎兵装備における鎧甲では、馬上における動きやすさを考慮して、それを可動綴とした点で大きく異なってくる。 騎兵装備は、韓半島を経由し、5世紀中葉以降の日本列島において、その存在を確認することができるのであるが、そのなかで、挂甲が普遍的に出土しているのに対して、馬甲・馬冑の出土が皆無に近いといってよい状況であることは、重装騎兵がほとんど普及していなかった状況を物語っている。これは、騎兵戦という戦闘方法と一体のものとして騎兵装備が取り入れられためではなく、単により性能の高い新しい武装として導入されたと考えられるとともに、当時、日本列島においては、重装騎兵による戦いを必要としなかったことを示している。5世紀中葉の日本列島に新たに導入された武器・武具は、本来的には騎兵装備であったが、そこに重装騎兵の装備は含まれていなかったとみるべきであろう。 東アジア各地域における武装の相違は戦闘方法の違いでもあった。弥生時代、古墳時代の武器・武具等に見られる変遷からは、日本列島内における戦闘に対処する装備として、外来の要素を導入しつつ、整えられてきた状況をうかがうことができるであろう。
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