Research Abstract |
本年度は,わが国地方圏のビジネスサービス活動がより明瞭になるように,以下のように,サービスの需要サイドの実態把握を目的とし,佐賀市において,従業員100人以下の中小企業660社に対して,ビジネスサービスのニーズの程度に関するアンケート調査を実施し,144企業から回答を得た。 アンケート集計の結果,中小企業の一番必要とするビジネスサービスは,税務に関するサービスであり,75.7%の企業が税理士を利用していた。これに対して,経営コンサルティングサービスに対する需要は低く,利用している企業はわずか8.3%にすぎなかった。そのほか,公認会計士は31.9%,社会保険労務士は20.8%,広告会社は44.4%,弁護士は34.7%,情報サービス業は59.9%の企業が利用していた。 このうち,税理士を利用する理由として「自社で調達できない専門サービスだから」が多いほか,「売り上げを伸ばすノウハウも教えてもらえるから」「方向性を示唆してくれるので」という点を挙げる企業が多く,税理士に経営コンサルタントとしての役割も要求している状況が明らかになった。 これに対して,経営コンサルタントを利用しない理由として「必要性を感じないから」が最も多く,そのほか「税理士に依頼している・相談している」「お金がかかるから」などを理由として挙げる企業もあり,ニーズ・ディマントギャップが一部存在するが,ほとんどニーズが発生していない状況であった。 このように,地方圏における中小企業経営者は,知識集約的ビジネスサービス業への依存は不要と考えており,たとえば,経営コンサルティングサービスに関しては「費用対効果」に対して疑問を持っており,中小企業経営者は,業務を行う上で収益性の最大化が最大の関心であり,節税対策が最優先であるといえる。したがって,経験主義を重視するわが国において,経営に関する知識サービス市場は成熟していないものと思われる。
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