2007 Fiscal Year Annual Research Report
スールー海域世界におけるサマ語系民族集団の移動と越境に関する文化人類学的研究
Project/Area Number |
16520498
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
床呂 郁哉 Tokyo University of Foreign Studies, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (90272476)
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Keywords | スールー海域世界 / サマ人 / 特殊海産物 / 真珠 / サバ / 人とモノのネットワーク / テクノロジー / 社会変化 |
Research Abstract |
本年度はフィリピン南部のスールー諸島およびその周辺地域(以下「スールー海域世界」と記す)に関して、そこで生活する各民族集団、すなわちタウスグ、サマ、サマ、ディラウトなど各民族集団毎に民族誌的資料を収集するとともに、スールー海域世界に生活するそうした海洋民たちの生産するいわゆる特殊海産物(ナマコ、フカヒレ、真珠、真珠母貝、燕の巣など)の生産(採取)とその国境を越える移動や越境、流通と消費に焦点を当てて調査研究を実施した。その結果、スールー海域世界を中心として東アジアを含むアジア海域世界、インド洋海域世界そしてオセアニアにまで至る特殊海産物の生産と流通・消費・技術移転等のネットワークが存在することが当事者の語りや文献資料等から明らかになってきた。たとえば白蝶真珠や黒蝶真珠の生産(養殖)に関して述べれば、もともと真珠養殖技術が日本で開発されたあと、南洋真珠の母貝の産地であったスールー海域世界や東南アジア海域世界が採貝や養殖の適地として注目され、そこから供給された母貝が沖縄などに輸出される一方、また日本人の黒蝶養殖技術者がフィリピン南部で技能を習得した後でフランス領ポリネシアに出かけていって現地で南洋真珠の養殖を展開するといった事例や、マレーシア・サバ州においてサマ人を雇用しつつ日本人が白蝶真珠の養殖を指導するといった複雑な人とモノ(海産物)、そして生産技術のネットワークが形成されているといった実態も明らかになってきた。またこうした海産物生産が現地社会にどのような影響を及ぼしたのかについても調査を実施した。
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Research Products
(2 results)