2006 Fiscal Year Annual Research Report
生活改善運動を要因とした関東山地及び周辺地域の居住習俗変化の実証的研究
Project/Area Number |
16520503
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
坪郷 英彦 山口大学, 人文学部, 教授 (70207439)
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Keywords | 民俗学 / 居住習俗 / 物質文化研究 / 住生活改善 / 火の神 / オカマサマ / イロリ / 竃 |
Research Abstract |
本年度が3力年の研究の最終年度にあたるため、これまでの未調査箇所である山梨県塩山地域の調査を実施した。さらに重点的調査箇所である埼玉県秩父郡及び秩父市の調査を実施した。本年度の調査で明らかになったことは次の通りである。 1,塩山地域では住生活改善は個別の家々で実施状況が異なる。行政の指導で土間を全面的に改装した事例、イロリ改善を行った事例がある反面、全く生活改善を行っていない事例もみられ、地域での集団的活動とはならなかったことが明らかである。一方、農業技術改良では養蚕から果樹へのまとまった変化がなされ、これは組合単位で行われたことが特徴である。果樹への農薬の使用が蚕の生育には災いとなり、地域内でのまとまった意志決定が必要となったためである。 2,秩父郡及び秩父市ではイロリから竈への改善が行われる中で、火の信仰はどのように変わったかを重点的に調べた。結果として、火の神は一つ「オカマサマ」で、イロリが竈に変わっても変化がない。その中で秩父市大滝ではイロリの自在鉤の神を祀っており、毎年愛宕地蔵尊の祭礼時に穴の開いた古銭を交換して戻り白在鉤に祀っていた。小鹿野町馬上ではお稲荷さんの人形を毎年交換して火伏せの神として神棚に祀って'いる。炉の神が別に存在したことを推定させる事例である。 3カ年の研究の成果として次のような知見を得た。 1,対象地域における昭和20年代の住生活改善は、イロリから竃への変更、養蚕空間の生活空間からの分離が主とした内容であり、その実施は地域単位あるいは各家個別で、行政主導あるいは時代の流行としてなど様々な形で行われた。 2,イロリは採暖、煮炊き、乾燥、集まり、食事の多面的な機能をもつが、住生活改善でイロリの廃止が実施される中で、その場はテーブルを上に置いて食卓として、さらにコタツとして使い続けられた。祭壇、食事、集まりの機能は継承されている。
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Research Products
(2 results)