2005 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア・オセアニア地域における呪術的諸実践と概念枠組に関する文化人類学的研究
Project/Area Number |
16520512
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
川田 牧人 中京大学, 社会学部, 助教授 (30260110)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 一敏 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 教授 (50179321)
白川 千尋 国立民族学博物館, 先端人類科学研究部, 助教授 (60319994)
津村 文彦 福井県立大学, 学術情報センター, 講師 (40363882)
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Keywords | 呪術 / 医療 / 科学 / 合理性 / 因果論 / 「モダニティ論」 / 理解 |
Research Abstract |
平成17年度は、昨年度に引き続き、参加者各自が民族誌データをもとにして呪術的諸実践を検討する研究会を継続し、計3回の研究会を開催した(第1回=6月25・26日、第2回=11月26・27日、第3回=3月12・13日)。 飯田は、タイ北部における民間医療と呪術の関係から、知識と行為の揺れ動く境界線上に呪術的諸実践が現れることを指摘した。津村はタイ東北部の薬草師を取り上げ、彼らが科学的知識をも取り入れながら施術する様態を報告し、呪術と科学は相克するだけではなく相補的関係に立ちうることを論じた。大橋はインドネシア・バリ島における呪いに取り囲まれた日常生活をあつかい、それへの対処として感情の統御法について検討した。川田はフィリピン・ビサヤ地方の呪術的諸実践にみられる論理を、比喩形象性(文学)、前兆証言(心理学)、逆行因果論(分析哲学)など周辺隣接領域の諸理論と接合することを試みた。 本研究は当初、東南アジア・オセアニア地域から、アフリカを中心とした呪術研究とりわけ「呪術のモダニティ論」を捉え直すことから出発したが、モダニティ論は呪術が社会のなかでいかに作用するかというある種の機能論であることを見出すにいたり、むしろ呪術の内実そのものを論じることへシフトした。そこから抽出されたのは「知識/行為」、「伝統/近代」、「科学/非科学(日常)」といったさまざまな二極のあいだを揺れ動いたり緩やかに連接したりする呪術的諸実践の基本的性格であった。このような性格の本源を人間の<理解>能力にもとめ、半信半疑にであれ実践に向かう<半理解>、否定や拒絶を伴いながらも実践に取り込まれていく<反理解>といったさまざまな理解の様態を議論するにいたった。 研究成果の公表については、参加者全員が執筆する最終報告書のほかに、日本文化人類学会第40回研究大会(2006年6月3・4日)において分科会の開催を予定している。
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Research Products
(4 results)