2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16530001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉田 正志 東北大学, 大学院・法学研究科, 教授 (30113872)
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Keywords | 雇用法 / 職業紹介 / 人宿 / 奉公人 / 賃労働者 |
Research Abstract |
3ヶ年計画で行われる本研究の2年度において実施した研究は、以下の通りである。 1 関係文献・史料の収集 (1)昨年度に引き続き、主に国会図書館を利用して、関係文献の収集を行った。 (2)江戸における「番組人宿」の時代的変容を探るための史料を、国会図書館等を利用して行い、また、外様大藩たる金沢藩・仙台藩の雇用安定法制関係史料を収集した。 (3)「奉公人市」関係文献・史料を、民俗学の成果をも利用して収集した。 2 収集史料の翻刻、分析・検討、執筆 (1)収集史料中とくに仙台藩関係については未刊史料が多く、その翻刻を行った。また、これらを利用して主として質物奉公人に焦点を当てた分析を行い、その成果の一部を「江戸時代の買戻しについて」と題する論文の1章として執筆した。同論文は、2006年10月刊行予定の「広中俊雄先生傘寿記念論集」(創文社)に収録予定である。 (2)金沢藩後期の雇用安定法制、とくに「奉公人座」の分析・検討を行い、武家奉公人と農村奉公人の需給バランスを取ることに、藩がいかに腐心していたかを確認した。 (3)江戸の「番組人宿」への幕府の介入度合いと、各地にみられる「奉公人市」への公権力の関わりについて検討した。 3 得られた知見 (1)前期の仙台藩には徳政担保文言のある質物奉公人請状が存在し、田畑の買戻しに等しい観念のもとで奉公契約が結ばれていたことが確認された。 (2)外様大藩では、武家奉公人の確保と農村奉公人の確保とが時として矛盾を来すことがあり、その両者の需給バランスをいかに取るかが重要な政策課題となったことが明らかとなった。 (3)比較的公権力から自由な「奉公人市」、公権力の介入の度合いが強い「番組人宿」等、各種奉公人紹介・確保機関と公権力との関係が重要な分析視角になる見通しがついた。
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