2006 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト社会主義の法システム形成における国際的文脈-ポーランドとロシアの比較研究
Project/Area Number |
16530002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小森田 秋夫 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (30103906)
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Keywords | ポスト社会主義の憲法 / EUの東方拡大 / 欧州人権裁判所 / アソシエーション法 / ポーランド法 / ロシア法 |
Research Abstract |
1.ロシアおよびポーランドにおいて資料蒐集を行なった。ロシアでは、仲裁裁判所において外国企業を当事者とする事件を傍聴するとともに、この種の事件を扱う法律事務所において聴き取りを行なった。ポーランドでは、ポーランド科学アカデミー法学研究所、憲法法廷、NGOの連合体などにおいて聴き取りを行なった。 2.上記の現地調査および文献研究の結果として得ることのできた主な知見は、次のとおりである。 (1)2005年4月に、憲法法廷が欧州逮捕状制度を国内法化した刑事訴訟法典に対して違憲判決を下したのを受け、2006年9月に憲法改正が行なわれた。この憲法改正は、「生命の保護」(妊娠中絶の禁止)の強化を意図した憲法改正の試みを誘発し、ポーランド人女性を原告とする欧州人権裁判所の判決ともあいまって激しい論争を惹き起こした。 また、中断していた欧州憲法条約をめぐる議論が再開され、ポーランドは引き続き決定方式に焦点を当てた主張を行なっている。 (2)労働法の分野では、ポーランドでEU法に適応するための法改正が行なわれてきたが、2006年には従業員評議会の設置が制度化された。その過程で、チェコなど他の東欧諸国の立法例を参照しつつ、政府・労組・経済団体の主張の調整が行なわれた。 (3)ポーランドで2003年に制定された公益団体法は、納税者が公益団体に所得税の1%を振り向けることを認める「パーセント法」を導入した。これは、スペイン・イタリアからハンガリーを経由してポーランドでも受容されるという、EU加盟とは異なる国際的文脈をもつ事例である。 一方、ロシアでは、非政府組織が国外からの政治的介入のチャネルとなっているという認識にもとづいて、規制を強化する法改正が行なわれている。
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Research Products
(1 results)