2005 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ中世国制史・法制史における地塞支配権ないしシャテルニーの研究
Project/Area Number |
16530005
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
櫻井 利夫 金沢大学, 法学部, 教授 (80170645)
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Keywords | 中世の城塞 / ドイツのシャテルニー / ドイツの城塞支配権(圏) / 西洋封建制社会の第二期 / 中部ライン河領域の城塞 / バン権力(罰令権力) |
Research Abstract |
フランス史学が重視したシャテルニーに関する研究がドイツと日本の歴史学・法制史学においては依然未開拓なままに残されているという問題意識の下で、中世ドイツにもフランス流の城塞支配権(圏)が存在したかどうかを研究した。まず,11世紀から13世紀が中世の城塞の最盛期であり,また特に12世紀と13世紀が中世の城塞建設の「古典期」であることを明らかにした。次いで,11世紀から13世紀までの封建制社会の第二期について,中部ライン河領域・モーゼル河流域の13の城塞を検討対象として取り上げ,各城塞につき史料に即して実証的考察を行った。その結果,そこで検出されたシャテルニーを示す用語がほぼすべてフランスのシャテルニーを示す用語に対応し,フランスのシャテルニーと本稿で考察したドイツのシャテルニーは,質的にもほぼ同一の性格を持つものであったという結論が導き出された。さらに、以下の5論点を提示した。第1に,封建制社会の第二期を,ドイツについてもシャテルニー段階として措定しうる展望が開かれることになったこと;第2に,シャテルニーからランデスヘルの地方行政組織への発展という問題であり,シャテルニーをランデスヘルシャフトの地方行政組織の問題として限定的に考える必要はないこと;第3に,シャテルニー形成の起動力として,都市・貨幣経済の復活という要因の外に,軍制の発展という契機をも考慮する必要があること;第4に,シャテルニー権力の中核をなすのは確かにバン権力(罰令権力)であるが,しかしグルントヘルシャフトの要素もまた無視することができない要素であり,この二つの要素が相俟ってシャテルニー権力を構成するという論点;第5に,シャテルニーがdominiumの言葉をもって表現されている場合に,支配権力たるシャテルニー権力はローマの所有権観念によって媒介され,所有権的なものとして理解されていたという論点である。
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Research Products
(1 results)