2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16530008
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
森下 敏男 神戸大学, 法学研究科, 教授 (90107920)
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Keywords | ロシア / 検察官 / 弁護士 / 体制転換 |
Research Abstract |
平成16年度の研究課題は、主として、ソ連崩壊後の検察制度および弁護士制度の転換の基本的特質を明らかにすることであった。 1.検察制度の転換。社会主義時代は、検察機関は、憲法によって「合法性の最高の監督機関」と位置づけられ、裁判所(最高裁を含む)よりも上位におかれていた(裁判監督権)。とりわけ「一般監督」といって、すべての人・法人・国家機関(最高国家権力機関を除く)の合法性を監督する権限を有していた。社会主義崩壊後、検察機関の権限をめぐって論争が展開され、1992年、1995年に新しい検察庁法が制定された(1999年改正)。その結果「最高の監督機関」という表現は使われなくなったが、一般監督権は現在でも維持されている。それは市民の権利保護や苦情処理の機能ももっているからである。ただ2001年制定の刑事訴訟法典が当事者主義を大幅に取り入れたため、検察官は、勾留決定権を初め、かなりの権限を失った。 2.弁護士制度の転換。社会主義崩壊後、2002年になってやっと新弁護士法が制定された。それによって弁護士の個人営業が可能になり、また弁護士活動の目的として、市民の権利・自由の擁護が明記された。制度は整備されたが、弁護士の権利意識、職業意識は伝統的に低く、その能力の向上が課題となっている。また権力による弁護士の活動の妨害(口実を設けて逮捕する等)事件が頻発している。 3.裁判所制度。制度研究は既に基本的には完了しているが、現状の諸問題として、裁判官の腐敗の問題(この問題をめぐって憲法裁判所と最高裁判所の間で論争があった)、最高仲裁裁判所長官の公募の実施などがあり、これらの研究を行った。 4.新検察庁法、新弁護士法の翻訳は既に完了したが、制度の転換に関する論文は現在執筆中である。また論文「新刑事訴訟法典の成立」をまとめたが、それは前研究「現代ロシアにおける刑事手続上の人権問題(下)」の最終章に組み込んで発表した。
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Research Products
(3 results)