2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16530010
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
笹倉 秀夫 早稲田大学, 大学院・法務研究科, 教授 (10009839)
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Keywords | 法原理 / EU法 / ratio legis / 人文主義法学 / 近世自然法 |
Research Abstract |
昨年度の研究をさらに深化させる研究を行った。その成果として、下記の知見を得、それを『法思想史講義』の中に文書化し、また比較法研究所の講演会等で研究報告した。 (1)ヨーロッパ近世の法学の研究--グロティウス、(ホッブス、ロック、)プーフェンドルフ、ヴォルフ、トマジウスなどについて、その幾何学的方法と人文主義的内容、原理的思考と経験的思考とを連関づけながら、その法学の特徴を押さえた。一見形式主義的でありながら、中身の濃い叙述が行われていることについての、方法論的考察である。本年度の研究では、また、この思考構造が、カント・ヘーゲルを得て、ドイツ私法学に入っていく過程をも追った。これらの作業によって、近世から近代にかけての法学の連続性と変化を時代的背景の中で明らかにするとともに、「実定法的原理」(制定法を超えた原理にもとづく法の運用)に関わる思考の歴史的位置をも把握できた。 (2)基本概念の形成の歴史的経過の考察--大陸法とコモン・ローの双方において人格権・所有権・寛容・法人などの基本概念がどういう過程を経て形成されていったかを分析した。それは、近代法が古代ローマ法から形成される過程を、中世法や近世の法学・法実務の役割を一つ一つ押さえながら明らかにする作業であった。また、この観点から《イギリスやアメリカにおける中世的伝統の意味》についても、独自の見解をもつことができた。 (3)EU法における「実定法的原理--EU法の実務は、新しい法であるため、制定法に欠缺が多く、それに対応するために、ヨーロッパの法実務の伝統やEU結成の精神に依拠して法原理を獲得し、それを適用するという手法をとっている。この点についての判例や立法化作業を追い、その現象を理論的に把握する作業を行い、報告に活用した。
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