2004 Fiscal Year Annual Research Report
先住民族の文化享有権及び知的財産権の保障の実証的・比較法的研究
Project/Area Number |
16530014
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
常本 照樹 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (10163859)
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Keywords | 先住民族 / 知的財産 / 文化享有権 / 台湾原住民 / アイヌ民族 |
Research Abstract |
本研究が取り上げる先住民族の文化享有権及び知的財産権の保障という二つの問題は、日本における先住権の現実的実現という点で共通する課題であるだけでなく、その理論的根底に民族のアイデンティティの保障があるという点で理論的にも共通しているのであり、一体的に研究を進めることが適切である。 平成16年度における文化享有権の実証的研究については、平取ダムの建設にかかる文化環境アセスメントの中間報告の作成に向けて平取町の「アイヌ文化環境保全対策調査委員会」の作業が進められるなかで、チャシやチノミシリなどの文化的遺跡の存在、とりわけ後者が現在でも祈りの場所として生き続けていること、動植物のアイヌ民族固有の利活用が継続されていること、古老を含むアイヌの人々への聞き取りによりアイヌ固有の生活様式が失われてはいないこと、などが確認された。 知的財産権の保障については、CBD、WIPOなどの知的財産法学界においても注目されている条約のほか、「先住民族の権利に関する国連宣言」や「先住民族の権利に関するアメリカ宣言」、国際人権規約、ILO169号条約など、先住民族の権利一般に関わる条約等も取り上げ、先住民族の知的財産に関する国際基準の検討を行った。また、諸外国との比較研究としては、現在のマジョリティが渡海して侵入したという点でアメリカやオーストラリア、ニュージーランドにおける特徴を共有するとともに、先住民のうち、早くから同化が進んだ部族が近年になって先住民族としての認定を主張しているという点で日本との共通点も有する事例として台湾に特に注目し、そこでの先住民政策と文化施策のあり方について検討することにした。その成果の一部は、16年10月に台北において中華民国行政院主催で行われた「族群與文化発展会議」および17年2月に北海道大学で開催された日台知的財産権シンポジウムにおいて報告した。いずれも公刊される。
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Research Products
(3 results)