Research Abstract |
本年度は,フランスにおける法曹像のあり方,法曹養成のあり方,についての現状把握をより深めるために,フランス国立司法学院を訪問する(2005年9月及び2006年3月)とともに,ヨーロッパ人権裁判所を訪問し,法曹像のあり方についての聞き取り調査を行った(2005年9月)。 前者においては,特に,同学院で教鞭をとる,司法官としての身分を有するDenis Salas氏の協力によって,同学院における現職司法官研修のあり方,及び裁判官論をめぐる他国の実務およびインターディシプリナリーな対話の状況についてのあり方について,多くの情報に接することができて,極めて有益であった。なお,Salas氏が2005年12月に来日した際に,東北大学法学研究科へ招致し,「民主主義社会における裁判官の役割」という講演を依頼し,当該テーマについて討論を深めることができた(本講演は,報告者の訳より東北大学法学部の紀要『法学』に掲載される)。このような作業を通じて,改めて印象づけられたことは,現在のフランスにおいては,司法権,そして裁判権力が民主主義社会における極めて重要なアクターとして存在感をますます強めており,そのような存在感に見合うだけの,裁判権力の理論的な基礎づけの試みが精力的に積み重ねられ続けてきていることである。 後者においては,ヨーロッパ人権裁判所裁判官のうち,ベルギー・ポーランド・ルクセンブルク・リヒテンシュタインの4力国の裁判官に面会することができ,本テーマについて有益な意見交換を行うことができた。どれだけ国家の裁量的判断を尊重しながらも,ヨーロッパの人権規範を遵守させることを腐心しているかについて,《現場》の苦闘を追体験することができて,極めて有益であった。
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