2004 Fiscal Year Annual Research Report
公法学の視点からみた多元主義と国家の中立性についての複合的研究
Project/Area Number |
16530020
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井上 典之 神戸大学, 大学院・法学研究科, 教授 (70203247)
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Keywords | 多元主義 / 国家の中立性 / 文化的基本権 / 補充性の原理 / EU人権 |
Research Abstract |
1 今年度の研究によって新たに得られた知見。 「多元主義」および「国家の中立性」をどのように実現していくか、という問題について、今年度は、ヨーロッパ憲法・人権関連の文献を中心に購入することで、以下のような知見を得ることができた。今年度は、主にスポーツの法的問題についての検討を行ったが、その際には、広義の文化活動としてヨーロッパでは広く人権・基本権によって保障された個人の自由な活動の1つに分類されており、原則として国家権力による介入の抑制されるべき領域と考えられる一方で、そのような個人の自由な活動を真の意味で実効的にするためには一定の範囲での国家の援助・助成が基本権上のものとして要請されることが分かった。但し、一方で自由な活動としながら、他方で介入の要請という一見すると矛盾する国家の側から見た文化、特にスポーツの領域での国家の中立性、公権力の中立的立場を確保するために、ヨーロッパ、特にEUがある意味でのモデルとしたドイツでの手法が、地方自治体のレベルを第一次的な公権力の責任主体と位置づけることにより、その多元主義化を図ることにより、全体的な国家レベルでは補充性の原理を展開することで実現するというものであることが分かった。その際に、補充性の原理は、単に私的な活動を補充することでスポーツや文化活動を真に意味あるものとするというのではなく、むしろ多元主義的な公権力責任主体を配置することによって、私的な団体からの具体的な要請に応じて「金は出すが口は出さない」という内容のものとして展開されていること、また、中立性の要請から、具体的に何をスポーツあるいは文化活動とするのかについても、まさに公権力によってそれが決められるのではなく、活動主体である個人・団体の自己理解をもってスポーツ・文化活動を規定するという「基本権主体による基本権内容の規定」という方法がとられていることも分かった。 2 以上の成果の一部公表 ヨーロッパ・ドイツにおける以上のようなスポーツ・文化領域での多元主義・国家の中立性に関する知見を基に、今年度は、特に日本で社会問題となったプロ野球という領域での法的・憲法的問題について、簡単な分析を試みた小論を発表する。そこでは、完全に国法から自由とされているプロ野球組織による選手に対する規律が、本来ならば中立的とされる国法・憲法からどのような法的問題を提起するのかを論じている。
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Research Products
(1 results)