2005 Fiscal Year Annual Research Report
憲法上の公私間関係と公共性-ドイツと日本の比較研究
Project/Area Number |
16530026
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中島 茂樹 立命館大学, 法学部, 教授 (10107360)
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Keywords | 公共性 / 公共圏 / 市民社会 / 憲法 / ハーバーマス / 国家 / 公私 / 正統性 |
Research Abstract |
「憲法上の公私間関係と公共性」というテーマにつき、「求められる公共性とは何か」という観点から規範的な問題設定の形で検討する際の柱として、(1)「公共性論のいま」、(2)「空間概念としての公共圏」と「正当性規準としての公共性」との関係、(3)「市民社会」(Zivilgesellschaft)概念と公共性問題、(4)「公共的なるもの」を判定する憲法論上の価値基準、(5)ボン基本法33条4項の「主権的権能(hoheitsrechtliche Befugnisse)、(6)憲法の規範的規制力の部分化という現象、という論点を設定していた。 本年度は、昨年度に引き続き、(1)の「公共性論のいま」につき、政治学や社会学上の「公共性」概念の検討、そのなかでもとくに、ハーバーマスの『公共性の構造転換』(1973年)から、1992年の『事実性と妥当』(Faktizitat und Geltung)への展開過程のなかでの「公共圏(性)」論や「市民社会」(Zivigesellschaft)論の特質とその問題点を検討し、さらにそのうえで、(2)および(3)の検討の柱につき、「正統性規準としての公共性」、「空間概念としての公共圏」および「市民社会」につき、それぞれの概念の特質とその射程距離、さらには「公共圏」論=「公共的政治空間」論の憲法学上の意義とその問題点をも検討し、それらがわが国の政治学や社会学、なかんずく憲法理論とのかかわりでどのような意義を有するかについて検討してきた。これらの検討の成果の一部として、本年度には、「改憲イデオロギーと公共性問題」(山口定・中島茂樹・松葉正文・小関素明編著『現代国家と市民社会』〔ミネルヴァ書房、2005年〕)を公表することができた。 この論文では、ハーバーマスの「公共圏」論と「公私」二元論から「私・公共・公」の三元論への展開を論じる理論動向との関係、国家をめぐる「正統性規準としての公共性」問題、改憲イデオロギーとの関わりでの「国家的公共性」の動向などを検討しており、最終的な研究のまとめに向けた一定の基盤の形成を見ることができた。
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