Research Abstract |
本研究の目的は,刑罰目的の観点から行う量刑事実の「選別」にあった。それも,統一的な視点から,個別的な問題を体系的に一貫させた基準で解決の指針を与えるということを特色とするものであった。 基礎となる刑罰目的論は,すでに先行業績で論じていたところであるが,最近,ドイツ刑法学において,この領域で大きな転換があり,本研究でもその最新の動向がわが国の議論に如何に影響を与えるかの検討を行うこととなった。その転換とは,(私の先行業績の時代には,ドイツにおいても日本においても有力となりつつあった)積極的一般予防論が衰退し,「新」応報刑論と呼ぶべき見解が台頭したことにある。それは,従来の応報刑論のような形而上学的な,ないし倫理的なものとして捉えるではなく,むしろ法と道徳との峻別に基づき,新たに「法の回復」を刑罰の正当化根拠として捉える見解のことをいう。本研究も,基本的にこの「新」応報刑論の立場に立脚し,しかも,わが国の通説的見解であった,すべての刑罰目的を刑罰正当化根拠として並立させる相対的応報刑論では,量刑基準を選別する機能を果たし得ないことを論証した。そこから,新たな量刑基準としての「法の回復」を用いて,とりわけ自首,被害者との和解などいくつかの量刑事実について判例を分析した。 その成果は,平成17年度開催の刑法学会(於:北海道大学)での学会報告「量刑体系における量刑事実の選別について」で公表した。また,捜査協力についての論稿が,『筑波法政』誌上に連載中である。また,平成18年度内に,その成果を単著として公刊する予定である。さらに平成18年5月に開催予定の刑法学会(於:立命館大学)でも,本研究の成果を刑法解釈学へと応用する分科会報告を行い,それもまた,『刑法雑誌』にて公表する。
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