2006 Fiscal Year Annual Research Report
役務提供契約概念の構造解明(フランス法研究を手がかりとした基礎的・理論的考察)
Project/Area Number |
16530050
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小粥 太郎 東北大学, 大学院法学研究科, 教授 (40247200)
|
Keywords | 契約法 / 思考形式 / 役務提供 / 理論 / フランス法 |
Research Abstract |
初年度、次年度の研究により、役務提供契約の特性が明らかになりつつあるとともに、役務提供契約にとどまらない契約法(さらに、あるいは民法)における思考形式のようなものが浮かびあがりつつある(拙稿「法的カテゴリの機能に関する覚書--現代フランス契約法学にみる民法的な思考形式の一断面--」法学69巻3号[2005]27-52頁、拙稿「専門家の責任と名誉」みんけん(民事研修)582号[2005]13-24頁)。 本年度は、研究計画の最終年にあたることから、上記の基礎的作業をふまえて、研究成果を公表した(拙稿「債務不履行の帰責事由」ジュリスト1318号[2006]117-126頁)。これについては、平成18年10月に開催された日本私法学会民法シンポジウム(「契約責任論の再構築」)において、報告と討論の機会に恵まれた。債務不履行の帰責事由という問題は、近年、潮見佳男教授や森田宏樹教授らの研究により、大きな進展がみられる。しかし、そこで念頭に置かれているのは、抽象的な契約一般、あるいはせいぜい売買契約であることが多く、例外はあるものの役務提供契約を念頭に論じられることは多くない。そこで、役務提供契約その他、より具体的な問題を通じて債務不履行の帰責事由の問題を分析した。具体的には、債務不履行の帰責原理を契約当事者の契約に求める有力な学説(前記の潮見教授や森田教授のもの)の意義について、契約法学の思考形式の観点もおりまぜつつ、検討した。近年の学説は、手段債務を正面から検討対象に取り込むなど、役務提供契約にも対処し得るものとなっていることは確かだが、履行不能や解除の要件についても役務提供契約に固有の検討課題があることが確認された。 研究期間中に公表された論文によって、役務提供契約概念の構造解明については一定の成果が得られたと考えるが、なお、残された課題もあり、それと関連して、契約法あるいは民法学の思考形式、さらには民法学の意義という次なる課題の存在が明確になった。
|
Research Products
(1 results)