2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16530061
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
岡 孝 学習院大学, 法学部, 教授 (10125081)
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Keywords | 法定解除 / 債務者の帰責事由 / 給付利得 / 不可抗力 / 危険負担 / 履行障害 / 国際情報交換 / 中国:韓国 |
Research Abstract |
今年度は、履行障害法のうち、特に法定解除の要件・効果について、以下の2点を中心に、中国合同法・韓国民法改正試案を調査・分析した(中国、韓国の研究者を招聘して研究会を開いたり、また当方が中国(吉林大学法学院、北京・清華大学)に出かけてインタビューし、あるいはシンポジウムで報告し、中国の研究者と討論した)。 1.債務者の帰責事由を要件から除外する点について 日本民法の改正を考えるさいに、法定解除の要件から帰責事由を除外することは1つのポイントになろう。その先駆者である中国合同法94条4号の「当事者の一方による……その他の違約行為により契約の目的実現が不可能となったとき」とは、どういう事例を念頭においているかを調査した。しかし、今回の調査で収集した事案はすべて、債務者に帰責事由が認められるものばかりであった。 一方、催告解除の場合にも帰責事由を要件とする韓国民法改正試案(現行の544条ないし546条を544条の2に一本化)をめぐる議論を調査・検討した結果、試案を支持する立場は、特に債務不履行解除の場合、帰責事由を要件としない解除と危険負担との区別があいまいになってしまうことを懸念していることが、判明した。帰責事由を不要とする解除と危険負担との並存は、近時のドイツ債務法現代化法にも見られることで、それなりの合理性があると思われる。次年度、韓国の研究者とこの点についてさらにつっこんだ議論を予定している。 2.受領物が滅失した場合の解除権の可否と原状回復の範囲 ドイツの判例で争われた事例を使って問題点を指摘しておく。買主が購入した中古車が不可抗力で滅失した場合でも、買主が車の事故歴を知らなかった場合には、瑕疵(事故歴)を理由に売買契約を解除できるだろう。この場合、買主は代金全額の返還請求ができるのか。それとも、車の滅失時の価値相当分の返還義務があるとして、その分を控除すべきなのか。この場合、契約の解除は認められようが(日本民法548条2項参照)、我が国の通説は、おそらく物が滅失している以上何も返還する必要がないので、時価相当分の控除は不要だ、という立場であろう(ドイツ民法346条3項3号も同旨)。この結論は売主の詐欺を理由に買主が売買契約を取り消した場合の事後処理(給付利得論によれば、不可抗力滅失の場合でも、買主は受領物の滅失時の価値相当分の不当利得返還義務がある、ということになろう)と一致しない。この点については、中国、韓国ともまったく問題意識がなく、比較の材料を集めることができなかった。次年度引き続き調査をする必要がある。
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