2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16530061
|
Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
岡 孝 学習院大学, 法学部, 教授 (10125081)
|
Keywords | 売主の瑕疵担保責任 / 不完全履行責任 / 代金減額権 / 追完請求権 / 履行請求権の優越性 / 東アジア普通法 / 国際情報交換 / 中国:韓国 |
Research Abstract |
今年度は、特に瑕疵ある目的物が給付された場合の買主の救済方法について調査・検討をおこなった。 1.韓国民法改正試案の立場(主として金敏圭・現東亜大学校法科大学教授の報告書に基づく) 特定物売買であっても原則として買主に追完請求権を認めることは、世界の趨勢である。そして、ドイツでは、履行請求権の優越性という伝統的立場を前提として、買主はまず追完請求権を行使すべきであり、それが功を奏さない場合に初めて代金減額権の行使が認められるのである。この点について、本研究代表者(岡)は、追完請求権と代金減額権の間には優劣関係はなく、買主の選択に任せるべきである、と目下のところ考えている。韓国改正試案(580条)は(試案に反対の研究者の大半がこの問題を意識していないようであるが)、私見と同様、買主の選択を認めるかのように見えて興味深い。日本の改正案を考えるに当たって、この試案の立場は参考になろう。 2.中国合同法 同法155条が準用する111条(不完全履行の場合の違約責任)によれば、買主は、「目的物の性質及び損失の大小に応じて、修理、交換、……減額……等の合理的な選択」をすることができることになっている。しかし、馬新彦・吉林大学法学院教授は、「最も便利で、コストも一番かからず、非常に効率的で損害も最小限に抑えられ、取引関係の安定に最も有利だ」という理由で、買主はまずは修補を請求すべきだ、と解釈している。この見解が中国でどのように評価されているか、今のところはっきりしない。目的物の性質なり損害の程度如何によっては、もちろん追完請求権(修補請求権など)をまず行使すべき場合もあろう。したがって、合同法の条文からは、馬教授のような解釈論以外の解釈の余地(例えば上記の私見)もありえよう。このような要件は、日本法でも参考に値しよう。 3.東(北)アジア普通法の形成可能性 金相容・延世大学校法科大学教授は、この可能性を主張している(学習院大学の「東洋文化研究8号」に講演原稿(翻訳)が掲載される)。履行障害法について、本研究代表者自身もこの視点を考慮のうえで、次年度本研究の成果をまとめたい、と考えている。
|