2004 Fiscal Year Annual Research Report
EU化学物質法政策における「予防原則」の具体化過程に関する研究
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16530074
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Research Institution | Tottori University of Environmental Studies |
Principal Investigator |
増沢 陽子 鳥取環境大学, 環境情報学部, 助教授 (90351874)
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Keywords | 環境政策 / 有害化学物質 |
Research Abstract |
研究初年度である16年度は、まず、REACHと現行EU化学物質法制との内容及び基本的考え方に関する相違点及びREACHにおける予防原則の具体的反映の状況を検討するため、EU法における予防原則の考え方を整理するとともに、REACHの内容の精査及び現行EU化学物質法との比較を行った。その結果、REACHは、(1)化学物質の製造から使用までを一元的に管理しようとするシステムであること、(2)既存化学物質と新規化学物質を使用の前提として一定レベルの情報を要求するという同じ原則に服させることとしたこと、(3)事前審査における予備的リスク評価の責任を事業者に求めること、(4)ある種の物質の製造使用についてハザードのみを根拠に禁止しリスクの観点からこれを解除する制度を取り入れたこと、が現行制度と大きく異なることがわかった。予防原則は、REACH全体の支持原則と位置付けられているが、特に(3)(4)の正当化根拠となっているとみることができる。 第二に、このように革新的な側面を持つREACHについてEU域内で一定の合意をみた要因を探るため、特に、政策立案過程における産業界の姿勢及び関係国政府の姿勢に関し文献及びインタビューによる調査を行った。その結果EU化学工業界はREACHの初期よりその基本的な考え方については支持してきたことが認められたものの、それがいかなる動機によるものかは今後さらに探求する必要があると思われる。また、REACH導入のイニシアティブを発揮した国としてスウェーデンとオランダが浮かび上がったが、リード国は議論の段階により異なり、時々の議長国の役割が大きいとの指摘もあり、EU特有の政治システムとの関係に注目する必要性も示唆された。研究2年度はさらに主体と視点を絞って研究を行うことを予定している。
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