2005 Fiscal Year Annual Research Report
EU化学物質政策における「予防原則」の具体化過程に関する研究
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16530074
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Research Institution | Tottori University of Environmental Studies |
Principal Investigator |
増沢 陽子 鳥取環境大学, 環境情報学部, 助教授 (90351874)
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Keywords | 予防原則 / REACH / 政策形成 |
Research Abstract |
EUの新化学物質法REACH提案は、その規定が予防原則によって支持されることを明記している。REACHは日本においても予防原則との関連で紹介されることが多いものの、関連性の具体的な内容は必ずしも明らかでない。この点につき、REACHの中で日本の化学物質法と比較して特に注目すべき制度、即ち、既存化学物質についても企業の責任においてデータ収集及びリスク評価を行うことを法的に義務付ける「登録」制度、及び、有害性のみを理由として一旦使用を禁止し、企業が提出するデータによってリスクが十分低い等が示される場合にのみ使用を認める「認可」制度を中心に研究を行った。文献及び政策担当者等へのインタビューを通じた検討によれば、「認可」制度については、予防原則の直接的な反映と見ることができる一方、「登録」制度については、予防原則の適用というよりも生産者責任の強化等別の文脈で捉える必要があると考えられる。 一方、REACH法案が実現に至った要因についても検討を行った。特に注目したのは、主要先進地域の中でEUだけが既存化学物質のデータ収集を法的に義務付けられた(登録制度)のはなぜか、産業界は政策形成過程でどのような姿勢をとってきたか、という点である。既存化学物質の情報収集については、日本では「自主的取組み」が産業界はもちろん行政からも一定の支持を得ている。REACHの立案過程に関する文献及び関係者へのインタビューから、EUの化学工業界が新たな規制を基本的に支持する方向に転じたのは2001年の化学物質白書が一つの画期であることが認められた。白書が登録制度を始めとする革新的な方向性を打ち出すことができた理由については、十分な資料を得ることができなかったものの、EUにおける環境政策としての化学物質対策の歴史と実態、リード国の戦略、日本と比較しても機能不全が著しい既存EU法の存在、などが可能性として挙げられた。
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