2006 Fiscal Year Annual Research Report
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16530081
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大嶽 秀夫 京都大学, 法学研究科, 教授 (40083563)
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Keywords | ポピュリズム / ネオ・リベラリズム / 郵政事業民営化 / 道路公団民営化 / 北朝鮮拉致問題 / イラク戦争 / 2005年総選挙 / 小泉純一郎 |
Research Abstract |
この30年ほどの日本政治においては、防衛問題に代えて、政治腐敗が最大の争点となってきた。そして、スキャンダルの発覚によって政治不信が最高度に達したときに、常に、特定の政治家(清潔で、それまでの政党政治から距離をとったアウトサイダー、ないしはそうした姿を演出した政治家)に対する期待が急速に高まった。新自由クラブがその嚆矢である。その後も土井たか子、細川護煕、菅直人、加藤紘一などが続いた。しかし、これらのポピュリスト型政治家は、いづれも短命に終わった。本研究では、なぜ彼らの人気が長続きしなかったのか、なぜ人気の後退が直ちに権力の喪失につながったのかを、アメリカの例と比較しつつ検討をおこなった。ところが、小泉純一郎だけは、その人気を維持し、しかも2005年の選挙では、再度人気の急上昇を経験した。日本の政治の中では稀有な例である。本研究では、これを小泉のマスコミ操作の巧みさ、自民党派閥政治家としての派閥操縦に関する卓越したマキャベリズム、彼のまわりに集まったブレーンたちの政治的、行政的能力などから説明できることを示した。さらに、選挙制度改革や橋本行革(とくに官邸機能の強化)などの制度変化の重要性を検討した。そうした検討に当たっては、小泉改革の最初の課題であった道路公団改革、その最大の政策課題であった郵政事業の民営化、そして外交政策上の二つの革新、すなわち自衛隊のイラクへの派兵と拉致問題の「解決」とをケース・スタディの対象に選び、小泉首相のリーダーシップの特質を抽出するという作業を行った。こうした検討を通じて、制度変化もさることながら、小泉という政治家の個性の重要性を明らかにしえたと考える。それが、それまでの「改革のサイクル」を超えた、永続的影響をもつ改革に成功しえた最大の理由であるというのが、本研究の結論である。今後は、小泉政権のマクロ経済運営に焦点を当てて、この検討を続けることにしたい。
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Research Products
(1 results)