2006 Fiscal Year Annual Research Report
メキシコとブラジルにおけるローカルな共有型分権化モデルの新たな実験
Project/Area Number |
16530093
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
松下 冽 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (50229465)
|
Keywords | 参加型予算編成 / ブラジル労働者党 / 市民社会 / 新自由主義 / ポルト・アレグレ / 相互エンパワーメント / 分権化 / ローカリズム |
Research Abstract |
本年度(平成18年)の研究実績としては、第1に『立命館国際研究』(19巻1号)がある。これは、発展途上国における国家の可能性を「国家-開発-市民社会」のトライアッド関係の視点から再考した連載論文の最終号である。本号の具体的内容は、第1に「公-私」の伝統的分割を越えた開発戦略の検討である。ここで、本研究課題であるメキシコの事例(社会資本の「共同生産」)とブラジルの事例(民主的共有権力の発展)を考察した。 本論文の第2の論点として、「グローバル化時代の民主主義と国家の再編」を取り上げた。具体的には、「開発主義国家と民主主義」、「市民社会の発展と権威主義」、「政治改革における相互エンパワーメントの限界」等について論究した。 第2の研究実績は『長崎平和研究』(21号)がある。本稿は「下からのグローバリゼーション」という視角から途上国における参加と民主主義の実態と実験を検討した。本稿はグローバル化の時代状況における「ローカルな視点」の重要性と限界性を確認し、インドとともにブラジルの「下からの」取り組みを分析した。インドの事例では、ケーララにおける分権化とNGOとの関係を、またブラジルの事例では、ポルト・アレグレの参加型民主主義の実験について論究した。 第3に、『季刊・現代の理論』(7号)掲載論文がある。本論文は今日のラテンアメリカの政治・経済状況とそこに通底する民衆の動向を考察している。一見すると、研究課題とは直接に関係しないように思えるが、この地域の市民社会や民主主義の発展を考える上で不可欠な研究作業である。ブラジルとメキシコにおける分権化の動向もこの脈絡に位置づけることは意義がある。 なお、本年度はブラジルのサンパウロおよびポルト・アレグレの大学と研究機関を訪問する機会をもった。また、ポルト・アレグレの参加型予算会議にも出席する機会があった。とくに、サンパウロ大学とリオグランデ・ド・スゥ連邦大学の研究者とは研究交流のネットワークを築いた。その意味で、本研究課題に関する今後の持続的研究の発展の保障となると確信している。なお、本研究の成果の一部をまとめた書物が平成19年度中に出版される予定である。
|
Research Products
(3 results)