2005 Fiscal Year Annual Research Report
朝鮮半島から見た北東アジア国際秩序:その形成と変動力学に関する再検討
Project/Area Number |
16530099
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木宮 正史 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (30221922)
|
Keywords | 米中和解 / 南北朝鮮 / 韓国外交 / 中朝関係 / 日韓関係 / 米韓関係 / 韓国の維新体制 / 朴正煕 |
Research Abstract |
今年度の研究実績は次の2点に要約することができる。 第一に、戦後における北東アジア秩序の大きな変動の契機となった1970年代初頭における米中和解が朝鮮半島に及ぼす影響に関する研究である。その一環として8月から9月にかけて約3週間の日程で、米国立公文書館、フォード大統領図書館、カーター大統領図書館などを訪問して、1970年代のアメリカ政府の外交文書に関する調査、分析を行った。また、韓国外交史料館を訪問し、1970年代における韓国外交文書に関する調査、分析を行った。米韓外交文書に関する調査はまだ完了してはいないが、収集した史料の一部に基づいて、「韓国外交のダイナミズム:特に、1970年代初頭の変化を中心に」という論文を執筆し、『戦後日韓関係の展開』の一つの章として出版した。この論文では、米中和解が、一方で朝鮮半島にも南北対話という緊張緩和の流れをもたらしたが、他方で、南北間の緊張緩和は定着せずに、むしろ、米朝和解の影響を遮断し朝鮮半島冷戦を持続させるような選択を、南北朝鮮双方の指導者が選択したことを指摘した。そして、その一因として、南北関係を極限的な対立ではない競争として再設定した上で、米韓同盟関係の変容に対応しなければならなかった、韓国政府の政治的選択に注目した。そのほか、韓国外交の通史的な展開に関する論文、および、朝鮮半島をとりまく冷戦の展開を、グローバル冷戦と朝鮮半島冷戦との乖離、同盟内政治と同盟間対立との連携という2つの観点から分析した論文を執筆した。これらは、平成18年度のうちに出版される予定である。 第二に、そうした韓国外交および朝鮮半島をとりまく冷戦の展開の中で、国交正常化40周年を迎えた日韓関係を位置付ける作業に取り組んだ。日韓関係は、戦後の北東アジア冷戦による強い制約を受けて、国交を正常化し、さらに経済協力関係を深めてきた。その結果、韓国は持続的な経済発展と政治的民主化を達成し、北朝鮮に対する体制優位を決定的なものにした。一方で、日韓国交正常化とそれに伴う日韓の協力関係が朝鮮半島をとりまく冷戦の展開にどのようなイムパクトを及ぼしたのかを、歴史的に解明する作業に取り組んだ。他方で、冷戦に制約されて形成された日韓関係が、ポスト冷戦期において、どのような変化をもたらしたのかを、北朝鮮核危機や韓流、歴史認識問題などを事例として分析する作業に取り組んだ。こうした研究成果は、約10回ほどの日韓関係や東アジア共同体などに関する国際会議で、日本語、韓国語、英語のペーパーを発表することを通してまとめることができた。 以上の2つの作業を中心として、朝鮮半島に焦点を当て、北東アジア国際秩序が冷戦期と冷戦後にどのような変動を経験したのかを実証的に解明する作業に取り組んだ。
|
Research Products
(4 results)