2005 Fiscal Year Annual Research Report
第二次世界大戦直後におけるソ連勢力圏の形成とスターリンの対外認識
Project/Area Number |
16530104
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
栗原 浩英 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (30195557)
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Keywords | スターリン / 冷戦 / 国際共産主義運動 / ソ連 / 超大国 / 世界戦略 / グローバル |
Research Abstract |
ロシア国立社会政治史文書館において,スターリン関係ファイル,特にイギリス共産党,中国共産党ファイル,チャーチルとの往来書簡ファイルの閲覧および関連資料の収集にあたった。また,昨年度に引き続き,中国外交部档案館においても,1949年から55年までを対象に,中ソ関係,中国・ベトナム関係,朝鮮戦争関係資料を同館で閲覧・調査した。その結果,以下の諸点を明らかにすることができた。 (1)昨年度は,スターリンが漠然としたアジア全般を問題にしていたわけではなかったことを明らかにしたが,同様なアプローチはヨーロッパについてもあてはまる。スターリンは,ポーランド問題に関しては,安易な妥協を排する姿勢を崩さなかったが,ギリシアやトリエステに関してはさしたる関心を示さず,英米と妥協した。ここからは,自国の安全保障に直結する問題を最重視しようとするスターリンのアプローチが確認される。 (2)スターリンはイギリス共産党幹部との書簡往復,会談の中で,「アングロ・サクソン諸国の共産党」という観念を提示している。ここには国家を超えた,スターリンの数少ない世界観が示されているともとれるが,その本質は伝統的なスターリンの民族論やかつてコミンテルン内部にみられた地域区分と重複しており,第二次世界大戦後に生まれた新しい観点とはみなせない。 (3)以上のようなスターリンのヨーロッパに対するアプローチや,世界観の片鱗を,フルシチョフ時代のソ連の対外政策と比較すると,フルシチョフが世界を大きく社会主義体制と資本主義体制とに二分して把握したり,民族解放運動支援の名の下に,アジア・アフリカ・ラテンアメリカ地域の革命運動に積極的に関与していったりしたのとは,同列に論じられる性質をもつものではないことがわかる。
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Research Products
(1 results)