2006 Fiscal Year Annual Research Report
予防外交の視点からみた平和構築の比較研究-民主的平和の限界-
Project/Area Number |
16530108
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
吉川 元 神戸大学, 法学研究科, 教授 (50153143)
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Keywords | 領域紛争 / 統治紛争 / 平和構築 / 民主主義による平和 |
Research Abstract |
本年度は、主として、アジアでの安全保障観および予防外交の現状、そしてアフガニスタン、イラクでの紛争構築の現状と課題について研究した。アジアで、なぜ欧米的な民主主義による平和、あるいは民主主義による安全保障の思想が受け入れられないのか、なぜ民主化の波が押し寄せないのか、そしてアジアではなぜ予防外交が展開できないでいるのか。それは、アジア諸国のあいもかわらぬ政権の正当性の弱さ、国民意識(一体感)の弱さから、アジアの国々が人権と民主主義という、いまやグローバル化した政治価値を受容することができないのである。特にこの点については、別記の論文"East Asian International Security in a Dilemma : Why is Asia against Democratic Peace and Security?"で詳しく論じた。 3年にわたる、本研究のテーマである、「予防外交の視点からみた平和構築の比較研究」について、主として領域をめぐる紛争(エスニック紛争)と統治(覇権)をめぐる紛争という紛争の形態に注目して、それぞれの「紛争後」の平和構築を比較してみると、その違いが判明してくる。特に領域紛争の後の平和構築が、エスニック対立の構図を残していることから、民主的制度を導入することがいかに困難を極めるかについて、政治制度の定着度のおそさ、国際機構の平和構築使節団の駐留期限の長さ、難民帰還の進展度の遅さなどを基準に、検討した。この論点については、過去3年間の研究調査を踏まえ、近いうちに「安全保障論」と題する単著の中の1章に取り上げている。
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Research Products
(1 results)